2025年夏に行われる参議院議員選挙について、各政党の最新公約・政策方針を主要争点ごとにわかりやすく比較解説します。与党と野党の役割や政策スタンスの違い、自民党政権が長期化する背景、参院選と衆院選の制度・影響力の違い、民主主義の本質と国民一人ひとりの責任、そして有権者が今回の参院選で何を考えるべきかを、初心者にも丁寧に説明します。
2025年夏、日本では参議院議員選挙(参院選)が行われます。参院選は私たちの暮らしや社会の未来を左右する大切な国政選挙です。しかし、「どの政党が何を主張しているのか分からない」「政治なんて難しそうだし自分の一票じゃ何も変わらないのでは?」と感じる方も少なくないでしょう。実際、政治に無関心だったり、「どうせ何も変わらない」とあきらめて投票に行かない人も多くいます。それはまるで、自分の住む町のルール作りを他人任せにしているようなものです。本記事では、日本国民全体を読者に想定し、2025年参院選のポイントを初歩から分かりやすく丁寧に解説します。
まず、主要な政党(自民党、立憲民主党、日本維新の会、公明党、共産党、国民民主党、れいわ新選組、社民党など)が今回掲げている公約・政策を経済政策、外交・安全保障、憲法改正、少子化対策・子育て支援、労働・雇用、エネルギー政策などの争点ごとに比較・整理します。その上で、与党と野党の違いや、自民党が長期政権を維持して「なかなか体質が変わらない」理由と多くの国民が現状を容認しがちな社会的・心理的背景について考察します。また、参院選と衆院選の制度上の違いや国政への影響力の違いを説明し、民主主義の本質とは何か、私たち国民一人ひとりにどんな役割・責任があるのかを見直してみます。そして最後に、今回の参院選に臨む有権者の心構えとして、何を考えどんな視点で投票すべきかいくつか提案します。

目次
- 2025年参院選・主要政党の公約比較 – 経済・外交安保・憲法・少子化・雇用・エネルギーなど争点ごとの各党政策
- 与党と野党の違いとは – 政権を担う与党とチェックする野党、それぞれの役割と政策スタンス
- 自民党政権が続く理由と国民の心理 – なぜ体質が変わらない?なぜ変化を求める声が小さい?背景を考察
- 参院選と衆院選の制度と影響力の違い – 任期や選出方法、国政への影響の差を分かりやすく解説
- 民主主義の本質と国民一人ひとりの役割 – 「国民主権」とは?私たちが政治に参加する意義と責任
- 2025年参院選、有権者は何を考えるべき? – 公約のどこを見る?どんな視点で候補や政党を選ぶ?具体的な提案
- まとめ – 本記事のポイント総ざらいと最後に伝えたいメッセージ
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1. 2025年参院選・主要政党の公約比較

まずは各政党の公約や政策方針を見てみましょう。今回の参院選で議論になる主要な争点ごとに、各党がどんな主張をしているかを比較します。争点としては、「経済政策」「外交・安全保障」「憲法改正」「少子化対策・子育て支援」「労働・雇用」「エネルギー・環境政策」などが挙げられます。それぞれについて、主な政党のスタンスをざっと整理してみましょう。
経済政策(物価高・税制・景気対策):物価上昇が続く中、消費税の扱いが大きな論点です。今回、野党や公明党はこぞって「消費税減税」を主張しています。立憲民主党(以下、立民)は「食料品の消費税率を1年間ゼロ%にする」と公約し、共産党も「消費税廃止をめざし緊急に5%へ減税」と訴えています。日本維新の会(以下、維新)や国民民主党(以下、国民)も一時的な減税や将来的な引下げを掲げ、れいわ新選組(以下、れいわ)と社民党も消費税減税・廃止に積極的です。一方、自民党は今回公約に消費減税を盛り込まない方針で、財源確保を優先し安易な減税には慎重です。ただし自民も「物価高で苦しむ低所得の方への手厚い支援策」や「ガソリン補助の継続」など減税以外の物価対策を検討しています。
公明党は与党ながら今回「減税の実現」を重点政策に掲げ、税収増を国民に還元する減税と給付のセットを打ち出しました。具体的には所得税基礎控除の引き上げによる実質減税や、「生活応援給付金」として一定額を全国民に給付する案です。また自動車関連税の負担軽減やガソリン税(暫定税率25円/L)の廃止も公明は明記しました。各党とも賃上げを重視する点は共通していますが、そのアプローチに違いがあります。自民党は企業の努力と政府の支援で賃上げを促し、最低賃金アップも図る方針です(岸田政権で「新しい資本主義」として賃上げ促進策がとられてきました)。
立民も「物価高を上回る賃上げ」を政治の責任で実現すると強調し、中小企業支援や正社員化促進を掲げます。維新は成長による賃上げを目指し、社会保険料の企業負担軽減策など独自案も出しています。共産党は「大企業の内部留保を活用して大幅賃上げを」と主張し、全国一律最低賃金1500円を提案。れいわ・社民も同水準の最低賃金引上げや非正規雇用の待遇改善を掲げています。さらに維新は大胆な経済改革策として「ベーシックインカム(BI)の導入」まで盛り込んでおり、毎月一定額を全国民に支給する代わりに所得税や消費税の減税など税制抜本改革を行うと発表しています。経済政策は家計負担をどう軽減し景気を下支えするかが各党共通のテーマですが、財政との両立について与野党で温度差があります。与党自民は財政規律を強調し「将来世代へのツケ」を懸念する立場ですが、野党側は「今の生活を守るため大胆に財政出動すべき」とする声が強めです。公明や国民など中道勢力はその中間で、必要な減税と財源確保のバランスを模索している印象です。
外交・安全保障:世界情勢が緊迫する中、防衛力の強化や日米同盟のあり方、それに関連して憲法9条改正が争点です。与党の自民党は昨年末に防衛費をGDP比2%へ増額する方針(「安保3文書」策定)を決定しており、長射程ミサイル配備や敵基地攻撃能力保有など安全保障政策の大転換を進めています。憲法改正についても、自民は「9条への自衛隊明記」を含む4項目の改正案を掲げ、参院選で改憲勢力の議席確保を目指しています。連立与党の公明党は基本的に改憲には慎重でしたが、近年は緊急事態条項の検討など限定的に議論に参加する姿勢です。ただ9条改正には慎重な支持母体(創価学会)の声もあり、公明は模糊とした態度を保っています。
安全保障政策では公明は専守防衛や外交努力を強調し、自民の軍拡路線をブレーキ役として緩和する立場です。一方、野党も一枚岩ではありません。保守系の維新と国民民主は、防衛力強化や改憲論議に前向きです。維新は「現実的な抑止力強化と憲法改正推進」を掲げ、9条を含めた憲法改正に積極的。国民も「国を守る現実的な安全保障政策」として、敵基地攻撃能力の保有を容認しつつ憲法議論にも参加しています。これに対し立憲民主党や共産党、れいわ、社民は防衛費の大幅増や敵基地攻撃能力の保有に反対の立場です。立民は外交重視で、食料品への米国関税問題など「トランプ米政権への対応」を争点に挙げつつ、専守防衛の範囲内で防衛力整備を図るスタンスです(立民の野田佳彦代表は「自由貿易をリードし日本の平和を守る外交」を掲げています)。共産党は「アメリカ言いなりの政治から脱却を」と訴え、日米安保条約の見直しや沖縄基地問題の解決、さらに核兵器禁止条約の批准など平和外交を最優先に据えています。防衛費43兆円増強計画について共産党は「暮らしも平和も壊す大軍拡だ」としてストップをかけると明言、れいわ・社民も同様に軍拡反対で足並みを揃えます。
つまり、安全保障では与党と維新・国民が「積極的抑止力派」、立民は「慎重派」、共産・れいわ・社民が「平和外交徹底派」という構図です。外交面では、中国や北朝鮮への対応、ロシア・ウクライナ情勢への姿勢も問われます。自民は米欧と協調しつつ中国にも毅然と対応するとし、立民も基本は同調路線ですが対話の重要性も説きます。維新は人権問題で中国への制裁を含む厳しい姿勢を打ち出しており、国民も同調気味です。逆に共産や社民は対話による平和構築を重視し、防衛より外交をという主張です。このように、外交安保政策は各党のイデオロギー色が最も表れる分野と言えます。選ぶ側としては、日本の平和と安全をどう守るか、「力による抑止」を重視するのか「外交による平和共存」を重視するのかが判断のポイントになるでしょう。
憲法改正:先ほど触れた安全保障にも関わりますが、憲法改正そのものも大きな争点です。特に争点となるのは憲法9条(戦争放棄・軍隊不保持)に自衛隊の存在を明記するかや、緊急事態条項(災害時などに内閣の権限を強める規定)を新設するかなどです。自民党は結党以来の悲願として憲法改正を掲げ、9条の改正(自衛隊明記)や緊急事態対応、参議院の合区解消、教育無償化など4項目について早期の発議を目指しています。公明党は改憲に慎重でしたが、与党として緊急事態条項創設など一部前向きに検討中で、9条改正は慎重のままです。
維新は自民以上に積極的で、独自の改憲草案(教育の無償化や統治機構改革など)を持ち、憲法審査会での議論活性化を強く主張しています。国民民主党も改憲論議には前向きで、例えば「環境権の明記」や「デジタル社会に対応した権利保護」など提案する姿勢です。これに対し立憲民主党は野党第一党として改憲議論自体は否定しないものの、現時点での改正発議には否定的です。特に自民案の9条改正や緊急事態条項には慎重で、まずは国民的議論が深まることを条件としています。
共産党と社民党、そしてれいわ新選組は明確に憲法改悪反対を掲げています。平和憲法9条は守り抜くべきとし、共産はむしろ「9条を生かした外交を」と訴えます。れいわも同様に戦争放棄の理念を堅持すべきとの立場です。簡単に整理すると、改憲賛成派(自民・維新・国民・公明(一部))と、改憲慎重・反対派(立民・共産・れいわ・社民)に分かれます。なお、有権者の間でも改憲への意見は様々ですが、「緊急事態条項」など一見良さそうに見えるものにもリスク(人権制限のおそれなど)があること、逆に9条改正も内容次第では現実の自衛隊の活動に大差ないとも言われることなど、慎重な見極めが必要です。この参院選で各党が改憲についてどう訴えているかを聞き比べ、自分の考えに近いかどうか確認すると良いでしょう。
少子化対策・子育て支援:日本の大きな課題である少子化にどう対応するかも、各党が力を入れるテーマです。与党では岸田政権が「異次元の少子化対策」を掲げ、新たにこども家庭庁を設置するなど動き始めました。自民党は児童手当の拡充(所得制限撤廃や支給年齢の拡大)や不妊治療の保険適用などを進め、さらに出産・育児にかかる経済負担軽減策を公約しています。具体的には出産費用の保険適用や、高校・大学の授業料負担減免の拡大などです。公明党はもともと子育て支援に熱心で、今回も「子育て応援トータルプラン」として、妊娠から子育て卒業まで切れ目ない支援の強化を訴えています。すでに実現した児童手当拡充や高校無償化のさらなる拡大に加え、「こども誰でも通園制度」(親の就労有無に関係なく保育園等を利用できる制度)の改善・拡大や、放課後児童クラブの受け皿拡充で「小1の壁」を解消することなど具体策を掲げました。
立憲民主党も「チルドレン・ファースト」のスローガンを掲げ、子ども予算の大胆な拡充を主張します。立民は特に就職氷河期世代などの未婚・非正規の人たちへの支援も少子化対策として位置づけ、安定雇用や住宅支援を通じて結婚・出産しやすい環境を作ると訴えています。また立民は児童手当のさらなる増額や、出産一時金の拡充、教育費負担の軽減(大学までの授業料無償化段階的実施)などを公約に盛り込んでいます。維新は「教育無償化」を強く掲げる政党で、幼児教育から高等教育まで段階的に無償化し、こども1人当たりに大胆な投資をする方針です。さらに維新は待機児童解消のため規制緩和などで保育の受け皿を増やすことや、婚姻・出産への経済支援(結婚新生活支援金の拡充など)も訴えています。共産党は子育て支援策として、思い切った現金給付とサービス保障を主張します。例えば「18歳まで医療費完全無料」や「学校給食費の無償化」、「全ての子に月1万円の『子ども基金』支給」など大胆です。保育所の待機児童ゼロに向け保育士待遇改善と保育所増設、公教育予算の大幅増による大学までの学費無償化も掲げています。
れいわ新選組も消費税財源の振替によって「毎月3万円の子ども手当を0歳~高校生に支給」など独自の高額給付案を持ち、幼稚園・保育園の完全無償化を打ち出しています。社民党も児童手当の大幅増額(例えば高校卒業まで月5万円支給)などを提案しています。各党とも少子化対策は危機感を持っており、「お金の心配なく子どもを産み育てられる社会にする」という目標は共通です。ただ、その財源確保については温度差があります。与党や維新・国民は経済成長や無駄削減で財源を生み出すとし、共産・れいわ・社民は富裕層や大企業への課税強化や歳出構造の転換(軍事費削減など)で捻出するとしています。この違いも念頭に、公約を比較すると良いでしょう。
労働・雇用政策:働く環境の改善や格差是正も重要な争点です。自民党は「成長と分配の好循環」を掲げ、企業収益を賃金に回す仕組みづくりや人への投資強化を進めています。具体的には、賃上げに応じた税額控除(企業の法人税を軽減するインセンティブ)などを既に実施し、最低賃金の引上げも推進しています。直近では地域別最低賃金の底上げにより全国平均1000円を達成する見通しで、将来的には更なる引上げも模索しています。また岸田政権では「新しい資本主義」として非正規から正社員への転換支援や、「リスキリング」(学び直し)支援によるキャリアアップを打ち出しています。公明党も同様の方向性で、「正社員待遇が当たり前になる社会」を目指すと公約し、同一労働同一賃金の徹底やリスキリング支援を訴えています。さらに公明は「もう少し働ける社会へ」として、高齢者や希望する人が健康を損なわない範囲で長く働ける柔軟な労働時間制度づくりも提案しています。医療・介護・保育などエッセンシャルワーカーの待遇改善も公明の柱で、国の価格設定に賃上げ分を反映させるなどで所得引上げを図るとしています。
立憲民主党は労働組合の支援も受ける立場から、特に非正規雇用の処遇改善を強調します。「非正規から希望すれば正社員になれる社会を」と訴え、不当な雇い止め・解雇をなくす法整備を掲げています。また最低賃金については時給1500円を目標に掲げ、政府支援で中小企業でも賃上げできるようにする方針です。長時間労働の是正やハラスメント防止など職場環境改善策も盛り込んでいます。維新は労働規制の柔軟化を主張する一方で、「働く人の手取りを増やす」観点から社会保険料の労使負担軽減を掲げています。例えば企業の厚生年金保険料を一定期間国が肩代わりする試案などです。最低賃金も維新は経済成長とセットで段階的に引き上げる考えです。
共産党は格差是正を最重視し、「大企業中心の政治から労働者・庶民優先へ」という立場です。具体策としては「最低賃金は直ちに時給1500円に」し、中小企業への十分な助成で実現させる、公契約(公共事業等)で労働者にちゃんとした賃金支払いを義務付ける「公契約法」強化、サービス残業根絶や過労死防止の徹底などを掲げます。派遣労働は原則禁止に戻し、正社員が当たり前の雇用にというスタンスです。れいわ新選組も似た方向で、派遣・請負労働の大幅規制強化やフリーランス保護、労働時間の短縮(週休3日制推進など)を提唱しています。社民党も労働者保護を強調し、解雇の金銭解決制度(クビにお金を渡して解雇する仕組み)に反対、雇用の安定を最優先とします。こうした違いから、与党と維新・国民は「企業の活力を引き出しつつ賃上げ」と野党(立民・共産など)は「法規制と公的支援で強制的に賃上げ」というニュアンスの差があります。ただ働く人を大切にという方向性自体は共通していますから、あとは手法の違いと捉えて、自分の価値観に合う政策を掲げているか注目すると良いでしょう。
エネルギー・環境政策:気候変動対策とエネルギーの安定供給をどう両立するかも各党の政策で違いが出ます。争点としては原子力発電所の再稼働や新増設、再生可能エネルギーの普及目標などがあります。自民党は政府方針として2050年カーボンニュートラルを掲げつつ、当面は原発の最大活用を打ち出しました。老朽原発の60年超運転や次世代革新炉の開発・建設にも踏み込み、原発を安定電源として位置付けています。再生エネも拡大するものの、現行では2030年度に電源の36~38%程度が再生エネという目標で、さらなる上積みには課題が残ります。公明党は気候変動対策に熱心で、再生エネの主力電源化や省エネ推進を強く唱えています。ただ原発に関しては「安全最優先で依存脱却を目指す」としながらも、現実には容認的です(連立政権内で認めざるを得ない状況)。
立憲民主党は原発に比較的厳しい立場で、2030年代までに原発ゼロを目指す政策を掲げてきました。再生エネ拡大や蓄電技術開発への投資、電力の地産地消モデル推進などを主張しています。今回の公約でも「原発に頼らない安全なエネルギー政策」を目指すとしています。維新は環境政策では「実効性ある温暖化対策」を掲げ、再生エネや蓄電池、水素エネルギーなど新技術への投資を強調します。同時に原発にも比較的寛容で「安全が確認された原発は当面活用する」現実路線です。ただ維新も将来的な原発依存脱却は掲げており、開発中の小型原子炉(SMR)などには慎重です。共産党は一貫して原発即時ゼロを主張しています。原発再稼働は認めず、事故から14年経った今も福島の現実を直視すべきと訴えます。共産党は「2030年までに石炭火力も原発もゼロ」という高い目標を掲げ、省エネと再エネで十分可能と試算しています。例えば2035年までに温室効果ガス75~80%削減(2013年比)との大胆な目標を提示し、そのために原発新増設方針の転換や石炭火力の早期廃止を強く求めています。
れいわ新選組・社民党も同様に脱原発・脱化石燃料への迅速な転換を訴え、気候危機への危機感を強調しています。れいわは大企業中心のエネルギー政策を改め、地域分散型の再生エネ社会への転換を掲げます。以上より、原発推進~容認派(自民、公明、国民、維新)と脱原発派(立民、共産、れいわ、社民)という構図です。ただ推進派も「安全性の確保」を前提条件にし、脱原発派も「現実的な代替エネルギー確保策」が必要といった議論の余地があります。気候変動対策については、与野党とも2050年カーボンニュートラルは目標として共有しますが、その歩みの速さが違います。共産や社民は2030年までに石炭火力全廃などかなり野心的なターゲットを示し、立民も欧州並みの削減目標を検討中です。一方、自民・公明・維新・国民は現実的達成可能性や経済との両立を重視する立場です。たとえば公明党は「国連が求める先進国の石炭火力2030年全廃」に日本も応えるべきとしていますが、政府(自民)としては現状そこまで踏み込んでいません。エネルギー政策は専門的ですが、日々の電気代や将来の地球環境に関わる重要政策です。「原発ゼロを急ぐか慎重にするか」「電気代高騰とどう向き合うか」「気候変動対策の国際責任をどう果たすか」など、自分の考えに近い政党はどこか比べてみましょう。
以上、主要争点ごとに各党の公約を比較しました。表面的なスローガンだけでなく、具体策や数値目標を見ると違いが見えてきます。もちろんここで紹介した以外にも、社会保障(年金・医療)改革や教育政策、地域活性化策、ジェンダー平等政策など多くの分野があります。例えばジェンダー政策では、立民・共産・れいわ・社民が「選択的夫婦別姓」や「同性婚法制化」に賛成なのに対し、自民・公明・国民・維新の一部では消極的といった違いがあります。また政治改革では、維新や国民が政治家の身を切る改革(議員定数削減・歳費削減、政治資金の透明化など)を強調し、与党も一定の対応を取る一方、野党の共産党も企業団体献金の全面禁止を主張するなど、クリーンな政治への取り組みが争点です。このように多岐にわたる政策分野について、ぜひ各党の公約集(公式HP等)を見比べてみてください。信頼できる情報源としては、総務省や選挙管理委員会のサイトに各党政策リンク集がありますし、大手メディアの選挙特集でも争点ごとの党の立場比較が掲載されています。
〔ワンポイント解説〕 政党の主張を比較するときは、「その政策で誰が得をし、誰に負担が及ぶか」を考えてみましょう。例えば減税なら一見皆ハッピーですが、税収減の穴埋めは将来どこかで必要です。防衛力強化は安全安心に繋がりますが、防衛費が増えれば他の予算を圧迫する可能性もあります。各党の政策はメリットばかり強調されがちですが、裏側のコストやリスクにも目を向けることが大事です。そうすることで、自分や家族の生活に本当にプラスになる主張は何か、見極めやすくなります。
2. 与党と野党の違いとは

続いて、日本の政治における与党と野党の違いについて整理しましょう。ニュースなどで「与党の○○党」「野党第一党の△△党」と耳にしますが、そもそも何がどう違うのでしょうか?シンプルに言えば、「与党」は現在政権を担っている政党(または政党連合)であり、「野党」は政権に入っていない政党のことです。
日本では国会で多数を占める政党が内閣(政府)を組織します。現在、衆議院で与党多数を占めて首相を出しているのは自民党で、公明党と連立を組んでいます。この自民・公明の連立政権が与党です。それ以外の立憲民主党や維新などは野党になります。
与党の役割は、選挙で公約した政策を実際に実行し、政権を安定運営することです。一方、野党の役割は、与党の政策や政治運営をチェックし、問題があれば批判・改善を求めることです。つまり、野党は与党の「監視役」「ブレーキ役」と言えます。与党が暴走し偏った政治をしないように、国会審議やメディアを通じて指摘し、必要に応じて対案(オルタナティブな政策案)を示すのも野党の大事な仕事です。
例えば、政府が法案を出したとき、与党はそれを成立させるのが仕事であり、野党はその法案の問題点を議論し国民に明らかにするのが仕事です。もちろん野党だって何でも反対ばかりしているわけではありません。本当に国民のためになる法案であれば賛成しますし、自分たちの政策と近い内容なら修正協議に応じて成立に協力することもあります。ただ一般的に、与党は法案成立を目指し、野党は慎重審議を求め必要なら成立阻止を図るという立場の違いがあります。
また、政権交代が起これば、昨日まで野党だった党が与党になることもあります。実際、日本でも2009年には民主党(当時)が与党、自民党が野党になりました。民主党政権期には、自民党が猛烈に政府批判を展開していたのは記憶に残るところです。そして2012年には再び自民党が与党に返り咲きました。日本では戦後ほとんどの期間、自民党が与党の座にあり、野党は「永遠の反対勢力」と見られる向きもありました。しかし本来、野党の究極の目的は「次の選挙で勝って政権につくこと」です。つまり、「未来の与党候補」でもあるのです。したがって野党には、単に反対するだけでなく「自分たちが政権を取ったらこんな日本にします」というビジョンを示すことも求められます。有権者に魅力ある政策体系を提示し、「この野党に任せてみよう」と思ってもらえなければ、政権交代は実現しません。
日本の現在の状況では、与党(自民・公明)が国会の過半数を占めており、野党は多数派にはなっていません(ただし直近の2024年秋の衆院選で自民・公明は過半数を割り込んでおり、参院ではどうなるかが注目されています)。野党勢力は立憲民主、維新、共産、国民、れいわ、社民など複数に分かれ、それぞれ主張も異なります。立憲民主党はリベラル系最大野党として与党に対峙し、自民党とは異なる社会像(例えば格差是正や多様性重視)を掲げます。日本維新の会は野党ですが保守改革志向が強く、自民党にも協力的な場面があります(例えば規制改革や財政再建では維新と自民が近いことも)。共産党は筋を通した野党として常に政府批判の立場を取り、野党共闘の調整役になる場合もあります。国民民主党は中道で、政策によっては与党に協力(例えば予算案に賛成するなど)しつつ、独自の存在感を模索しています。れいわと社民は小さいながらも与党には批判的で、反緊縮や護憲で強いメッセージを出しています。
野党には様々なカラーがありますが、一致しているのは「長期政権の弊害を正す」という姿勢でしょう。例えばモリカケ問題や桜を見る会問題など自民党政権の不祥事追及では、野党が結集して政府を問いただしました。こうした行政監視も野党の大切な役割です。
もう一つ重要な違いは、政策実現のアプローチです。与党は自ら法律を作り予算を配分できる立場なので、現実的かつ具体的な政策を打ち出す傾向があります。反面、どうしても官僚主導で無難な内容になり改革のスピードが遅いという批判も受けます。野党は理想やビジョンを語りやすく、大胆な政策も掲げられますが、それが絵に描いた餅で終わらぬよう具体性を詰める必要があります。また与党は支持基盤(業界団体など)の利益調整も背負うため、政策が妥協的になりがちです。一方、野党は支持層の期待に応えて政府批判を強めすぎ、「反対ばかり」「建設的でない」と見られるリスクもあります。
いずれにせよ、与党があって野党があり、両者が緊張関係にあることで健全な民主政治が保たれるのです。片方だけではだめで、車の両輪に例えられることもあります。与党がハンドルとアクセルを握り、野党がブレーキとバックミラーを担当する、と言えるかもしれません。どちらが欠けても、安全運転で目的地(国民の幸福)には辿り着けないでしょう。
〔例え話〕 与党と野党の関係を、学校に置き換えてみましょう。例えば学校の生徒会で執行部(会長や役員)が与党、風紀委員や監査委員が野党のイメージです。執行部(与党)は学校祭の企画や予算配分など実行する役目です。一方、監査役や風紀委員(野党)は、生徒会が暴走していないか監視し、「それは校則に違反してない?」「もっとみんなの意見を聞くべきじゃない?」とブレーキをかけます。執行部だけだと好き放題してしまうかもしれませんが、監視役がいることで全校生徒の声が無視されないようになるわけです。国政も同じく、与党だけではなく野党の存在が政治のバランスをとっているのです。
3. 自民党政権が続く理由と国民の心理

日本の政治の特徴として、自民党政権の長期安定がしばしば挙げられます。戦後ほぼ一貫して与党の座にある自民党は、良くも悪くも「日本の政治そのもの」のような存在感です。「自民党の体質がなかなか変わらない」と言われることもありますが、それでも選挙では大きく負けないため、政権が交代しにくい状況があります。では、なぜ自民党は変わらず強いのか? そして、なぜ多くの国民は現状維持を選びがちなのか? その社会的・心理的背景を考えてみましょう。
(1) 自民党の「体質」と長期政権の構造:自民党は1955年の結党以来、ほぼ一党支配に近い形で政権を維持してきました(一時的に他党政権になったのは1993~94年と2009~2012年のみ)。長年政権を担う中で、官僚機構や産業界、地方組織と強固なネットワークを築いてきました。俗に「鉄の三角形」と言われる政・官・業の癒着も指摘されます。自民党内部には派閥があり、政治資金やポスト配分でのし上がる派閥政治の文化があります。長期政権ゆえにモラルハザードも生じ、汚職スキャンダルや金権体質が繰り返し問題となりました。「体質が古い」「派閥の論理ばかり」と批判されつつも、自民党は時に看板(総裁)を替え、時に野党の主張も取り込みながら生き延びてきました。つまり、変わらないようで微調整し、延命しているとも言えます。
例えば80~90年代のリクルート事件や金丸信事件など汚職が起きるとクリーンなイメージの総理(細川護煕氏ら)が誕生し、2000年代の郵政選挙で小泉旋風が吹いたかと思えば、政権が行き詰まると民主党に政権が移り、しかし民主党政権の混乱で自民党が復活…という具合です。自民党は「しぶとさ」「柔軟さ」で長期政権を維持しているとも言えます。一方で「本質的な体質は変わっていない」と見る向きもあります。例えば最近も旧統一教会と政治家の癒着問題や、閣僚の政治とカネの不祥事が続出しました。それでも政権は存続し、党として大きく変わりません。この背景には、自民党が強力な支持基盤を持っていることがあります。地方の農業団体や建設業界、医師会など各業界団体、さらには創価学会(公明党を通じて)など、組織的に選挙協力する支持層が自民党には豊富です。組織票と資金力で他党を圧倒できるため、選挙戦で有利なのです。さらに小選挙区制では野党が乱立すると自民党が漁夫の利を得やすく、現行制度も自民に有利に働いています。こうした構造的な強みが自民党の長期政権を支え、「多少問題が起きても政権は続く」状態になっています。
(2) 国民が変化を望まない(ように見える)理由:では、有権者側の意識はどうでしょうか。「なぜみんな自民党に入れるの?」「不満があっても行動しないのはなぜ?」という疑問が出ます。その背景にはいくつかのポイントが考えられます。
安定志向・現状維持バイアス:人は大きな変化に不安を覚えるものです。特に日本では「和を以て貴しとなす」という文化もあり、社会の急激な変化を好まない傾向があります。自民党は長く政権を担い、ある意味「無難」で「安心感」がある存在です。大きな失敗はあってもすぐ調整して元に戻してきた歴史があり、「なんだかんだ自民党に任せておけば大丈夫だろう」と思う人が多いのです。例えるなら、古くて問題も多いけど安定走行するベテラン運転手(自民党)と、若くて理想は高いけど運転経験の浅い新人ドライバー(野党)なら、事故なく着実に走ってくれそうなベテランに任せたい心理です。特に高齢の有権者ほど現状維持を望む傾向が強く、投票率も高齢層の方が高いため、結果として保守政党である自民が有利になります。
野党不信・受け皿不足:国民の中には「自民党も嫌だけど、他に任せられる党がない」という声も多いです。2009年に政権交代した民主党政権は、確かに成果もありましたが(子ども手当、高校無償化など)途中で迷走し、最後は東日本大震災対応や消費増税問題で国民の信頼を失いました。「やっぱり民主党はダメだった」という記憶が残り、民主党の流れをくむ立憲民主党にも厳しい目が向けられがちです。野党間の分裂や足並みの乱れもマイナスです。共産党とは組みたくない、維新とは政策が合わないなどで野党がバラバラだと、「こんなバラバラでは政権任せられない」と思われてしまいます。実際、「野党は批判ばかりで対案がない」「責任能力がない」というイメージがあり、野党不信が根強いのです。このため、有権者が消極的に「他にマシなとこ無いし今回は自民でいいか」となりがちです。
政治への冷めた視線(シニシズム):国民の中には政治そのものに冷笑的・シニカルな見方をする層もいます。「どうせ政治家なんて汚いことしてる」「誰がやっても同じ」といった諦めムードです。特に若者世代で「政治に期待しない」「投票しても何も変わらない」と思っている人は少なくありません。このような政治的不信感・無力感が広がると、投票率は下がり現職が有利になります。そして政治に関心を失った国民が多いと、政治家も特定の支持層だけを見て動くようになり悪循環です。あるシンクタンクの指摘によれば、有権者の政治への冷笑主義(シニシズム)が政治家の想像力を欠如させる一因にもなっているそうです。つまり国民側が「どうせ汚い」と政治から離れてしまうと、政治家も一部支持層への迎合に走り、国民全体の方を向かなくなるという悪い循環です。この意味で、国民の政治離れ・無関心も自民党長期政権を支える土壌になっています。
利益誘導と既得権:自民党は各地域に「この道路を作ります」「補助金持ってきます」といった利益誘導型政治を長く行ってきました。いわゆる「地元にハコモノや道路を作って支持を得る」政治です。これで恩恵を受けてきた人々(建設業者や地元有力者など)は自民党を熱心に支援します。また農業者への補助や、中小企業への融資制度など、既存の政策恩恵を守りたい層は変化を嫌がります。野党が「既得権益を壊す」と言っても、自分の生活基盤が壊されるかもと感じる人は野党を支持しません。維新のように改革を唱える政党も、既得権に直接切り込む姿勢には賛否が割れます。このように政策受益者が現状維持を望むことも、自民党が支持され続ける一因です。
メディアと情報の影響:テレビや新聞など既存メディアの論調も影響します。大手メディアは概ね中立ですが、政権寄りの論調も少なくありません。また地方紙や地方TVほど保守的傾向が強いとも言われます。さらに昨今はSNSでのフェイクニュースや扇情的情報も飛び交い、政治不信を煽ったり野党攻撃をする情報も溢れています。そうした情報環境も有権者の判断に微妙な影響を与え、「なんだか野党は頼りないし自民しかないか」という空気が作られることもあります。
以上のような要因が複合的に絡み合い、「結局自民党」が続く構図になっていると考えられます。
しかし、これで本当に良いのでしょうか?民主政治において、一党が長く権力を握り続けることには弊害もあります。緊張感の喪失や腐敗、新しい発想が出にくくなる停滞などです。実際、安倍・菅政権を通じて強権的な手法やお友達人事が批判されました。現政権でも旧統一教会問題など「なあなあ」な部分が露呈しています。一方で国民側にも「政治なんて汚いから距離を置こう」「投票しても意味ないし」といった冷めた態度が広がると、政治はさらに国民と乖離してしまいます。前述のように、この冷笑主義的態度が政治家を一部支持者ばかり見る原因にもなるのです。
要するに、政治は鏡でもあります。自民党が変わらないのは、有権者の多数が変化より安定を選んでいるからとも言えます。「政治家が悪い」と突き放すだけでなく、国民自身が現状を許容してきた面もあるのです。例えば近年問題になった閣僚の不祥事などでも、内閣支持率が多少下がっても政権自体が倒れることは稀です。結局「まぁ他よりマシか」と続投が容認されてしまう。このような国民の反応(厳しい審判を下さないこと)が、自民党の長期政権を可能にしています。
もちろん、一部には変化を強く望む国民もいます。大規模なデモやSNSでの批判が高まることもあります。ただ日本では他国に比べデモなど直接行動は少なく、また望ましい変化を起こす受け皿(有能な新党)がなかなか出てこないこともあって、大きなうねりにはつながりにくいのが現状です。
ここで重要なのは、「国民の多数が本当に変化を望んでいないのか?」という点です。実は世論調査を見ると、多くの国民は現状の政治に満足していないことが多いのです。「政府を信頼できるか?」という問いに「信頼できない」が多数だったり、「物価高対策が不十分」「説明責任を果たしていない」など不満も多くあります。それでも選挙結果としては自民党が勝つ。このギャップには、「野党にも期待できないから消去法で自民」という選択や、「政治に期待しないから投票に行かない」という消極的態度が隠れています。つまり、本当は変えてほしいけど変わらないだろうと諦めている人が結構いるのではないでしょうか。
ここが民主主義の難しいところです。変えたいなら行動し投票で示さなければ変わりません。しかし長年の政治不信で行動しなくなる人が増えると、現状が温存されます。まさに「政治への諦め」が自民党を延命させている側面があると言えます。逆に言えば、国民が本気で「変えたい!」と多数立ち上がれば、いかに自民党でも政権を失うでしょう。2009年はまさにそういう選挙でした(当時は年金記録漏れ問題や格差問題で不満が高まり、民主党への期待が大きかった)。
(3) ではどうすれば政治は変わるのか? この問いに正解はありませんが、一つ言えるのは、国民の意識と行動が鍵だということです。自民党を含め政治家は有権者の反応に敏感です。本当に国民がNOを突きつければ、どの政党も変わらざるを得ません。実際、過去に自民党も選挙で大敗し下野しましたし、その後反省して看板を変えて戻ってきました(ただし本質が変わったかは議論がありますが…)。また自民党内にも改革派や良識派はいます。国民の声が大きくなれば、党内からも変化の動きが出る可能性があります。
結局、自民党の体質が変わらないのは、「それでも政権を維持できているから」でしょう。国民が本気で愛想を尽かし政権の座から引きずり下ろせば、次に政権に返り咲くときはさすがに変わるかもしれません。逆に、現在のように問題が起きても支持率が急落せず政権が続いてしまうなら、党も「このままで大丈夫だ」と慢心してしまう恐れがあります。
長期政権の弊害は、少しずつ政治への信頼を損ねます。しかしその信頼低下がさらに政治離れを招き、また長期政権が続くという悪循環になってはいないでしょうか。これを断ち切るには、有権者一人ひとりが「政治は自分たちのもの」という意識を取り戻すしかありません。「お上にお任せ」ではなく、「自分たちが主役」と考えて行動すること。その点については、後半で民主主義の本質として詳しく述べたいと思います。
〔身近な例に置き換え〕 あなたの職場や学校で、長年トップ(上司や校長)が同じ人だったとします。最初は有能だったその人も、長く君臨するうちに少し独善的になりミスも増えてきました。それでも周りは「まあ他に適任いないし」「文句言って干されたら嫌だし」と現状を容認しています。誰も声を上げないのでトップも反省せず、体質は変わりません。これと同じことが政治の世界でも起きているのかもしれません。結局、周囲(私たち国民)が声を上げないと、トップ(政権)は変わらないのです。
4. 参院選と衆院選の制度と影響力の違い

ここで改めて、参議院選挙と衆議院選挙の違いについて整理しておきましょう。同じ国政選挙でも参院と衆院では仕組みや役割が異なります。これを理解すると、参院選の意味や影響がよりクリアになります。
(1) 任期と解散の違い:衆議院議員の任期は4年ですが、総理大臣の判断で途中解散があります。平均すると約3~4年に1度は衆院選が行われます。一方、参議院議員の任期は6年で、衆院のような解散がありません。その代わり3年ごとに半数(定数の半分)を改選します。つまり参院選は原則3年ごとに必ずやってくる定期的な選挙です。衆院選は任期満了前に解散されれば急に行われるので、時期が不定期です。参院は解散がなく任期固定なので、衆院より腰を据えた議論ができるとされています。また政権に左右されず独立性が高い点も特徴です。
(2) 選挙制度の違い:衆院選は小選挙区制+比例代表の並立制です。全国を289の小選挙区に分け各区から1人を選ぶ方式と、11ブロックの比例代表で全体176人を選ぶ方式を組み合わせています。一方、参院選は都道府県単位の選挙区制+全国区の比例代表です。都道府県ごとに合区含め45の選挙区があり、そこから今回74人(改選定数)を選びます。各区の定数は人口比で1~6人程度で、上位得票者から定数分が当選します(中選挙区的です)。比例代表は全国を一つの単位とし、政党に投票して計50人(改選)を選出します。衆院比例は政党名を書く「拘束名簿式」ですが、参院比例は政党名か候補者名かどちらかを書ける「非拘束名簿式」で、個人得票も考慮されます。また参院は衆院と違い重複立候補不可(選挙区と比例の同時立候補はできない)です。これら制度の違いから、参院選は地域代表性と全国民意の集約の両面があります。衆院小選挙区では1位以外は当選できず死票が多く出ますが、参院選挙区は複数区なら2~3位でも当選のチャンスがあり、民意が比例的に反映されやすいです。また全国比例では小政党や無所属候補も当選しやすい土壌があります。実際、参院には衆院にはいない諸派・無所属議員が一定数います。
(3) 権限・役割の違い:衆議院は内閣総理大臣の指名や予算の先議権があり、何より内閣不信任決議を可決できます。内閣は衆院で不信任されたら総辞職か衆院解散をしなければなりません。つまり政府は衆議院の多数に支えられていないと存立できないのです。参議院には不信任決議の権限がなく、政府は参院で問責されても直接のダメージにはなりません(政治的影響はあります)。このため、内閣は主に衆議院を基盤に運営されます。
しかし、参議院にも立法府として重要な役割があります。法律案や予算案は両院で可決しなければ成立しません。もし衆院と参院で結論が割れた場合、両院協議会という調整機関を開いて一致を目指します。それでも一致しない時、憲法は衆議院の優越を定めています。具体的には、予算と条約と内閣総理大臣の指名は参院が30日(首相指名は10日)以内に議決しないか異なる議決をした場合、自動的に衆議院の議決が国会の議決になります。また法律案については、参院が否決したものを衆院が3分の2以上の多数でもう一度可決すれば法律になります。これが衆議院の優越で、衆院の方が最終決定権を持つことがあるのです。これは衆議院の方が任期が短く解散もあり「より民意を新鮮に反映している」と考えられるからです。参議院は任期が長く解散がない分、民意の変化にタイムラグがあるので、その分決定権で衆院が強くされています。
では参議院は不要かというと、そうではありません。参議院があることで、衆議院の多数派(与党)が提出する法案を慎重に審議し直すことができます。例えば参院で与野党が逆転する「ねじれ国会」になると、政府・与党の法案が参院で否決され成立が遅れたり修正を余儀なくされたりします。2007年~2013年頃は参院で野党が多数となり、政府法案が通らず捻れ状態でした。その時は政治の停滞とも批判されましたが、一方で与党の暴走を防ぎ慎重な審議を促す効果もありました。参議院は「良識の府」とも呼ばれ、短期的な民意の波より中長期的視点で落ち着いた審議をする役割が期待されています。衆院が与党の数の力でスピーディーに決めるのに対し、参院はじっくり専門的議論をする場とも言われます(実際、参院には学者や各分野の専門家なども多く当選しています)。例えば近年の法案でも、参院で附帯決議(付加条件)をつけて修正可決し、より現実的な内容に軌道修正した例があります。つまり、参議院は「もう一つのチェック機関」であり、衆院と車の両輪で国会が機能するよう設計されています。
(4) 国政への影響力の違い:前述の通り、内閣は衆議院の信任に基づきますので、何よりも衆院多数が重要です。したがって通常、政権の行方を直接左右するのは衆院選です。衆院選で与党が負ければ政権交代が起こります。一方、参院選は政権交代に直接つながらない場合が多いです。参院で負けても衆院多数を与党が持っていれば政権は維持できます。ただ、参院選の結果次第では首相が責任をとって辞任したり、衆院解散に追い込まれるケースもあります。過去には参院選大敗で首相が辞めた例(1989年宇野首相、2007年安倍首相第一次政権辞任など)もありました。また、2025年現在まさに参院で与党過半数割れが起きるかもしれず、そうなると衆参ねじれとなり、法案ごとに野党の協力が必要になります。ねじれは政権運営を難しくし、場合によっては衆院解散して態勢立て直しを図ることもあります。ですから参院選も間接的に政権の行方を左右する重要な選挙です。
また参院選は中間評価の場とも言われます。政権が発足してから最初の大型国政選挙が参院選であることが多く、有権者が現政権にノーかイエスか審判を下します。2025年参院選も、2024年の衆院選で発足した石破政権に対する最初の全国審判になります。ここで与党が大敗すれば、政権は大きな打撃を受け求心力を失います。逆に勝てば「信任を得た」となり、しばらく安定運営できます。このように参院選は政権の通信簿的な意味を持ちます。
制度的な影響力では、先ほど触れた衆議院の優越により最終的には衆院が強いですが、参院も例えば内閣総理大臣の指名で別の人を選んだ場合、両院協議会で不一致なら衆院指名者が首相になります。過去、衆参で首相指名が割れたことはありませんが、ねじれ国会下では可能性としてはあり得ます。また条約や予算も参院が決めないと自動成立しますが、参院の反対意思表示として否決すること自体に政治的意味があります。
まとめると、
- 衆議院:任期4年(解散あり)、小選挙区中心の選挙制度、内閣の基盤(不信任あり)、法律・予算の最終決定権を持つ、政権の命運を直接左右。
- 参議院:任期6年(解散なし、3年ごと半数改選)、中選挙区的選挙制度、内閣不信任はないが議決でチェック、慎重審議の場、政権への間接的影響大。
この両院制により、日本の政治は一応バランスが取られています。極端な法案が衆院を通っても参院で修正・抑制されることもありますし、逆に参院で野党が足を引っ張りすぎると衆院の3分の2再可決で突破もできる。どちらかが万能ではない仕組みです。「参議院はいらない」という議論も時にありますが、二院制のメリットとして「時間をかけて熟議ができる」「一時的な民意の偏りを是正できる」ことが挙げられます。ただしデメリットとして「ねじれで政治が停滞しやすい」ことも事実です。これについては今も議論があります。
有権者としては、衆院選では政権選択を、参院選では政策の是々非々を問うという意識を持つとよいでしょう。参院選は与野党勢力図を変えるチャンスでもあり、衆院で多数の与党でも参院で負ければ国会運営に緊張感が生まれます。逆に与党が参院でも圧勝すれば、衆参ねじれがなくなり政府がスムーズに政策を実行できます。それが良いか悪いかは視点によりますが、少なくとも参院選も国政に大きな影響を与える選挙なのです。
〔参考データ〕 参院選の投票率は衆院選より低い傾向があります。直近では2022年参院選の投票率は52%台、2021年衆院選は55%台でした。わずか数ポイントの差ですが、一般に「政権が変わらない選挙だから関心が低い」と言われます。しかし参院選も前述のように重要な意味を持ちます。特に若い世代の投票率が低いことが問題視され、「シルバー民主主義」(高齢者の意向が強く反映される政治)を助長しているとも指摘されています。一票の価値は衆院も参院も同じです。ぜひ参院選にも関心を持っていただきたいと思います。
5. 民主主義の本質と国民一人ひとりの役割

ここで少し視点を変えて、民主主義の本質について考えてみましょう。「民主主義」という言葉はよく聞きますが、その根本には何があるのでしょうか?また、国民一人ひとりにどんな役割や責任があるのでしょうか?
(1) 民主主義の基本原理:日本国憲法は冒頭で「主権が国民に存する」と宣言しています。つまり、国の意思の最終決定権(主権)は国民にあるということです。国政は「国民の厳粛な信託」によって行われ、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者(議員)が行使し、その福利(利益)は国民が享受すると憲法前文に明記されています。これはまさに民主主義の原理であり、「民主主義は人類普遍の原理である」とまで謳われています。
要するに、民主主義とは国民自身が自分たちの社会のルールを決める仕組みです。王様や独裁者ではなく、みんなで話し合って決める(直接民主制)か、代表者を選んで決めてもらう(間接民主制)のが民主政治です。日本は間接民主制(代議制)を採用しており、私たちは選挙で代表としての国会議員を選び、その議員たちが法律を作ったり首相を決めたりしています。
(2) 民主主義における国民の役割:民主主義の主役は誰でしょう?それは私たち一人ひとりの国民です。政治家や官僚が偉いのではなく、本来は国民がボスなのです。先ほど触れた憲法の文言を平たく言えば、「政府は国民から預かった権限で政治を行い、その力の源泉は国民、政治の恩恵を受けるのも国民」となります。政府・議会は国民から委任された代理人に過ぎません。そのため民主政治では、私たち国民が自分の意思を政治に反映させる責任があります。少し厳しい言い方をすれば、政治がもし酷い状況なら、それを許している国民にも責任の一端があるということです。
国民の役割としてまず選挙に参加することが挙げられます。選挙は国民の意思表示の場であり、投票は最も基本的な政治参加です。1票の力は小さいように見えるかもしれません。しかし、それが集まれば政権がひっくり返るほどの力になります。現に日本でも数万票差で当落が決まったり、小選挙区で負けた候補が比例復活したりと、各一票が積み重なって結果を左右しています。投票しなければ、自分の意思がカウントされないだけでなく、「政治に関心がありません」と示すことにもなってしまいます。そうすると政治家も「この人たちのことは考えなくていいや」と無視しかねません。一方、きちんと投票すれば政治家は「この層の意見を汲み取らねば次は落選する」と緊張感を持ちます。一票一票が政治家を動かすプレッシャーになり、ひいては政治を良くする原動力になるのです。
国民の役割は投票だけではありません。日常的な政治への関与も大切です。例えばニュースで政治の動きをチェックしたり、知りたいことがあれば議員事務所に問い合わせたり、意見を送ったりすることもできます。最近は国会中継もインターネットで簡単に視聴できます。議論の内容を知れば「こういう理由でこの法案に反対してるのか」と理解できますし、納得できなければ抗議の声をあげることもできるでしょう。デモや集会に参加するのも立派な政治参加です。要するに、主権者(国民)として政治を監視し声を上げることが必要です。これは会社で言えば株主が経営陣をチェックするようなものであり、学校で言えばPTAや生徒が校長先生の方針をチェックするようなものです。
また、民主主義社会では多様な意見の共存が前提です。自分と違う考えの人も当然存在します。それらを対話と妥協でまとめていくのが民主政治のプロセスです。国民一人ひとりには、自分の意見を表明するとともに他者の意見にも耳を傾ける責任があります。多数決で決めるにしても、最初から決めつけて対話しないのでは健全な結論は出ません。多くの人が政治的な話題をタブー視せず、建設的に議論する文化が必要です。例えば普段の会話で「この増税策、自分はこう思うけど君はどう?」と気軽に話し合える雰囲気があれば、政治はもっと身近になります。最近はSNSで政治的意見を発信する人も増えましたが、罵倒し合いではなく互いを尊重した議論が広がることが望まれます。
(3) 民主主義の本質:民主主義を一言で言えば「自分たちのことを自分たちで決める」ことです。国の形、社会のルールは本来支配者が一方的に決めるものではなく、そこに暮らす人々が合意して決めるべきだという考え方です。そのためには、国民が主体的に政治に参加しなければなりません。逆に言うと、国民が無関心で権利を行使しなければ、民主主義は形骸化してしまいます。名ばかりの民主主義(いわゆる「ハリボテ民主主義」)にならないようにするのは、私たちの責務です。
よく「民主主義は完璧ではないが他のどの制度よりマシだ」という言葉があります。それくらい民主主義も課題を抱えます。時間がかかるし、国民が愚かだと愚かな結果になる危険もあります。しかし、それでも権力が独占されず国民に開かれている点で、他の独裁制や貴族制より優れているとされています。民主主義の質を高めるのは、結局のところ主権者である私たちの民度と努力なのです。
例えば、ある町の住民全員でお祭りの出し物を決めるとします。民主的に話し合って決めようというのに、半分以上の人は関心を持たず話し合いに参加しなかったらどうなるでしょう?一部の声の大きい人の意見だけで決まってしまうかもしれません。それで後から「なんでこんな出し物に?」と文句を言っても、参加しなかった人にも責任がありますよね。国の政治も同じです。自分たちが作る社会なのだから、自分たちが考えて決める。これが民主主義の本質です。
(4) 国民の一票・一言の重み:最後に、国民の行動が政治を動かした実例も触れておきます。2011年の原発事故後、原発ゼロを求める国民運動が高まり、大規模デモや署名が行われました。その結果、政権も2030年代原発ゼロ目標を打ち出したり、大飯原発の再稼働を一時止める司法判断が出たりしました。2018年には森友・加計問題などで内閣支持率が下がり、首相が釈明会見に追い込まれました。これらは国民の批判の声が無視できないレベルになったからです。逆に、明確に民意を示さないと政治家は動きません。例えば消費税増税なども、本当は反対が多くても組織だった反対運動がなければ粛々と実行されてしまいます。国民の声が揃えば、政策が覆ることだってあります(過去に郵政民営化法案否決などもありました)。ですから、自分には関係ないと黙っているのではなく、是は是、非は非と声を上げることが何より大切です。
民主主義社会では、政治は決して他人事ではありません。「政治なんて関係ない」は通用しないのです。政治が決めたルール(法律・税制)は必ず私たちの生活に影響します。だから、一人ひとりが自分ごととして政治を捉え、「より良い社会にするにはどうしたらいいか」を考えて行動する必要があります。それは難しいことではありません。選挙で投票する、意見を周囲と語り合う、時には議員にメールを書く、デモに参加してみる――そうした小さなアクションの積み重ねが社会を動かします。
〔比喩〕 民主主義は「みんなで運転するバス」だと言われます。国というバスをどこに向かわせるか、ハンドルを握るのは本来国民全員です。選挙はそのハンドル操作の機会です。もし多くの乗客(国民)が居眠りしていたら、バスは一部の目覚めた人の言う通りに進んでしまうでしょう。それが安全な道ならいいですが、崖に向かっていたら大変です。みんなで目を覚まし、進路を話し合いながらより良い道を選ぶ――それが民主主義というドライブの本質なのです。
6. 2025年参院選、有権者は何を考えるべき?

では、いよいよ今回の参院選に話を戻しましょう。2025年の参議院選挙に際して、私たち有権者はどんな視点で候補者や政党を選べば良いのでしょうか?ここまでの話を踏まえ、いくつか考えるべきポイントと行動のヒントを提案します。
(1) 自分の一票で「何を託すか」を意識する:選挙は未来への選択です。自分の大切な一票で「この人(党)になら日本の未来を託せる」と思えるかどうか、じっくり考えましょう。ただイメージや雰囲気で選ぶのではなく、その候補者・政党の公約や理念を確認してください。例えば経済政策ひとつ取っても、「消費税減税」で目先の負担軽減を図る案と、「財政健全化」で将来世代の負担軽減を図る案とでは方向が違います。自分や家族、地域にとって何が大事か、優先順位を整理しましょう。教育費が気になる人は教育政策重視で選ぶ、年金が心配な人は社会保障政策を比較する、といった具合です。各党の公約比較は本記事の第1章で述べましたが、ぜひ公式サイトや選挙公報も見てみてください(総務省の選挙サイトには各党の政策集リンクがあります)。同時に、その候補者の人柄や実績も大事です。新人なら演説などを聞いて人となりを感じましょう。現職ならこの6年何をしていたか実績を調べましょう。国会の質問主意書や議員のブログ・SNSなどを見ると、その人の関心分野や仕事ぶりが垣間見えます。選挙は履歴書審査にも似ています。あなたの代理人にふさわしい人材かどうか、しっかり見極めましょう。
(2) メディアや複数の情報源を活用する:政治の情報は一つの媒体だけでなく、複数に当たることをお勧めします。テレビニュース、新聞、ネットニュース、SNS、それぞれ偏りがちなのでバランスを取るためです。特にSNSは共感しやすい情報ばかり表示される傾向(フィルターバブル)があり、一方的な見方に陥りがちです。逆の立場の意見にも触れてみることで、自分の考えの妥当性を検証できます。またNHKや大手新聞社の選挙特集では、候補者アンケートや討論会動画などが公開されます。党首討論や候補者討論を視聴すると、公約の裏側にある考え方も理解できます。例えば経済政策一つでも「富裕層増税すべきか」「原発再稼働すべきか」など、立場の違いが鮮明に出ます。討論での受け答えから候補者の力量や人柄も判断できるでしょう。幸い今はYouTube等で主要討論は誰でも見られます。少し時間を取って視聴してみましょう。
(3) 身近な話題に引き寄せて考える:政治の話は抽象的で分かりにくいと感じるかもしれません。そんな時は、自分の日常に関係付けて考えてみてください。例えば物価高で食費が辛い→各党の物価対策・減税策はどう違う?保育園に子どもを預けたい→どの党が待機児童問題に力を入れている?電気代が上がって困る→エネルギー政策で原発動かすか再エネ推進か?…といった具合です。政策を自分ごとに落とし込むと、違いが鮮明に見えてきます。候補者の主張に対し、「もしこの人が当選したら自分の暮らしはどう変わりそうか?」を想像してみましょう。良い変化が期待できると思えば投票の決め手になりますし、「この人がやろうとしていることは自分の望む社会像と違うな」と感じたら別の人を選ぶ判断になります。
(4) 与党か野党かの戦略投票も一考:参院選は政権選択選挙ではないとはいえ、先述のように政治の勢力図を左右します。現政権を評価するなら与党候補に、反対なら野党候補にという投票行動は合理的です。特に今回は直前の衆院選で与党が過半数を失い少数政権となっている状況で、参院で与党がさらに議席を減らせば「ねじれ」が決定的になり政権運営が厳しくなります。逆に与党が参院で巻き返せば政権基盤が安定します。ですから、石破首相(自民)率いる現政権を今後も支持するか、それともブレーキをかけたいかによって、与党候補か野党候補かを考える方法もあります。ただし盲目的に与党・野党と決めつけず、その選挙区の候補者個人の資質も見てください。参院選は一人区(定数1)も多く、与野党一騎打ちになる選挙区もあります。政党のカラーもさることながら、「この地域の代表としてふさわしいか」「地元課題を理解しているか」なども判断材料です。
(5) 若い世代ほど投票に行こう:特に若い有権者の皆さんに伝えたいのは、「あなたの将来はあなたの一票にかかっている」ということです。高齢者は投票率が高く、その声は政策に強く反映されます。一方、20代の投票率が低いことで、政治家はなかなか若者向け政策に本腰を入れません。教育無償化や将来世代の社会保障なども後回しになりがちです。これを変えるには、若者が投票に行き「自分たちにも配慮しろ」という意思表示をするしかありません。将来の年金や気候変動対策など、長期的課題ほど若者世代に関わります。あなたが投票すれば、政治家はきっと意識します。「若者を無視しては選挙に勝てない」と思えば、各党こぞって若年層支援策を打ち出すでしょう。実際、18歳選挙権が実現してから政治家の若者向け発言も増えました。これは良い兆候です。ぜひ棄権せず、友人同士でも誘い合って投票に行ってください。それが自分たちの未来を守るアクションになります。
(6) 一票の重みを再確認:最後に、一票の価値の話をします。以前と比べると有権者数の地域差が拡大し、一票の格差が問題になっています(現在最大約3倍の格差)。しかしどんな地域でも、一票は一票です。その積み重ねで結果が決まります。悩んだ末に投じた一票は、未来への投資のようなものです。たとえ自分の入れた候補が落選しても、その票が次の政治行動につながることもあります。各党は得票を分析し「この地域で支持が増えている」などを見ます。次回に向けて政策を修正したり候補者を擁立したりするかもしれません。一票を通じて、あなたの意思は必ず政治にフィードバックされるのです。そのプロセスを信じて投票所に足を運びましょう。特に参院選は投票日が7月の暑い時期になりがちですが、期日前投票も含め全国どこでも投票しやすい環境が整っています。少し早起きする、仕事帰りに立ち寄るなどして、貴重な主権行使の機会を逃さないでください。
(7) 周りにも声をかける:あなた自身が投票に行くだけでなく、周囲の人にもぜひ声をかけてみてください。「今回選挙あるけど行く?」と誘うだけでもOKです。家族で政治の話をしてみるのも良いでしょう。政治の話は避けがちですが、私たちの暮らしに直結する大事なテーマです。決してケンカ腰にならず、互いの意見を尊重しつつ話せば、新たな発見もあります。職場や学校でも、「最近こんなニュースあったね」と切り出してみると、思わぬ議論が弾むかもしれません。民主主義は多数決だけではなく、議論を通じた合意形成が肝心です。選挙をきっかけに、皆で社会のことを考える時間が増えれば、それだけで民主主義は前進します。
以上、参院選に臨む有権者の視点を提案しました。要は「自分の頭で考え、主体的に選ぶ」ことです。言い換えれば、「いま政治に何が足りないか、その処方箋を自分なりに描き、それに近い候補を選ぶ」こととも言えます。政治家や政党は万能ではありません。どの公約にも実現の難しさや副作用があります。しかし私たちはベストではなくともベターな選択肢を見つけて投票しなければなりません。その積み重ねで、政治は少しずつ良くなっていくはずです。
〔未来への責任〕 参院議員の任期6年は、ちょうど小学校入学の子が卒業するまで、高校1年生が社会人になるまでの長さです。その間に世の中は大きく変わるでしょう。私たちが下す一票の判断は、そうした未来の6年間に影響を与えます。未来の子どもたちに胸を張れる選択をしたいものです。「あの時ちゃんと考えて投票したから今がある」と思えるような、責任ある一票を投じましょう。
7. まとめ

最後に、本記事のポイントをまとめます。
2025年参院選の公約比較:自民党・公明党の与党連立と、立憲民主・維新・共産・国民民主・れいわ・社民など野党各党は、経済、外交安保、憲法、少子化、雇用、エネルギーなど主要争点で異なる政策を掲げています。野党の多くは物価高対策として消費税減税を訴えますが、自民党は減税より財源確保を重視。防衛費増額・憲法改正では与党と維新・国民は積極、立民・共産などは慎重・反対で意見が割れます。子育て支援は各党充実に前向きですが財源アプローチが異なり、公明は減税給付を組み合わせた生活支援策を強調。共産・れいわなどは大胆な直接給付を提案しています。労働政策では与党は企業支援で賃上げ誘導、立民・共産は最低賃金引上げ・非正規改善を強く主張。エネルギーでは自民は原発活用、共産・社民は原発即時ゼロ、立民や維新は将来的脱原発を見据えつつ現実対応、などスタンスが分かれました。それぞれの政策はメリットと課題があるため、有権者は自分の生活や信念に照らして最適な選択肢を見極めることが大切です。
与党と野党の違い:与党は政権を担い政策実現する立場、野党は政権外から与党を監視・批判し代案を示す立場です。与党は安定した政治運営を図り、野党は政府の暴走を防ぐブレーキ役として機能します。両者が緊張関係にあることで政治のバランスが保たれます。一党長期政権が続くと驕りや腐敗が生じやすいため、健全な民主主義には有力な野党の存在と国民の監視が不可欠です。最終的に政権を決めるのは衆院多数なので、野党の究極目標は政権交代ですが、そのためには国民に信頼される受け皿となる努力が必要です。有権者としては、与党か野党かで思考停止せず、それぞれの良い点・問題点を見極め、時には政権交代で緊張感を取り戻す選択も検討すべきです。
自民党政権が続く背景:自民党の体質(派閥政治、金権体質)は長年指摘されつつ、大きく変わらないままです。それでも政権を維持できているのは、組織票や資金力などの構造的強み、野党の弱体化、そして国民の現状追認があるからです。国民心理として、急激な変化より安定を好む傾向、野党への不信や政治への無力感が自民党を利しています。投票率の低さや政治への冷笑主義が蔓延すると、政治家も国民全体より一部の支持層しか見なくなり悪循環を招きます。結局、政治を変えるには国民の意識と行動が鍵です。自民党が変わらないのは「それでも勝てるから」であり、本気で変えたければ国民が選挙でノーを突きつけるしかありません。民主主義では、国民は傍観者ではなく当事者であり、政治の質は国民の選択の反映です。ですから、有権者一人ひとりが政治に無関心でいないこと、自分たちの一票に責任を持つことが重要です。
参院選と衆院選の違い:参院選は3年ごと半数改選で任期6年、衆院選は最大4年ごと(解散あり)で任期4年とサイクルが異なります。衆院が内閣信任・不信任の権限を持ち、首相指名や予算・法案で優越します。そのため政権の存続は衆院多数に依存します。一方参院は解散がなく中長期的視点の良識の府として作用し、与党が衆参両院で多数を握らない限り法案修正や成立遅延などブレーキ役になります。衆院選は政権選択選挙、参院選は中間審判の意味合いがあり、政権への評価を示す場です。衆院小選挙区制は民意が偏りやすいですが、参院は複数区や全国比例で多様な民意を反映します。国政への影響力も違い、参院で与党が敗北するとねじれ国会となって政策遂行に影響します。要するに、衆院=即時的民意の反映と政権の座を決める場、参院=継続的民意の反映と政策熟議・チェックの場という役割分担です。有権者は両院の違いを踏まえ、参院選も政権に対する審判や重要政策の是非を問う機会として活用すべきです。
民主主義の本質と国民の役割:民主主義とは国民が主権者として自らの代表を選び、自らの意思で社会のルールを決める仕組みです。政治の主役は国民一人ひとりであり、選挙で投票することが基本的な責任です。また、日頃から政治に関心を持ち、情報を集め、議論に参加し、必要なら声を上げることも求められます。国民が無関心でいれば、民主政治は形骸化し権力者のやりたい放題になりかねません。逆に国民がしっかり監視し参加すれば、政治はより公正で良い方向に向かいます。民主主義の本質は**「自分たちのことを自分たちで決める」**ことであり、それには主権者である国民の積極的な関与が不可欠なのです。多様な意見を認め合い、対話を通じて合意を形成する態度も重要です。私たち一人ひとりが民主主義社会の責任ある構成員(市民)として行動することで、はじめて民主主義は機能します。
今回の参院選で有権者が考えること:最後に、2025年参院選に向けて有権者への提案をしました。各党公約を比較し、自分や家族の生活に引き寄せて判断すること、複数の情報源をあたり候補者の主張や討論をチェックすること、現政権への評価として与党・野党どちらに託すか考えること、そして特に若い世代は棄権せず投票に行くことが挙げられます。投票は未来への意思表示です。6年間政治を任せられるかどうか、自分なりによく考えましょう。一票の重みは大きく、自分の選択が社会を動かす可能性があると自覚してください。周囲にも投票を呼びかけ、皆で政治を語り合う雰囲気を作ることも民主主義を強くします。結局、より良い政治を作るのは他ならぬ私たち自身です。私たち有権者が賢明な判断を積み重ねれば、子どもたちの未来に胸を張れる社会を遺せるでしょう。
以上、長文となりましたが、2025年参議院選挙について主要なポイントを解説しました。初心者の方にもできるだけ噛み砕いて説明したつもりです。**私たちの一票一票が、日本のこれからを形作ります。**この記事が皆さんの判断の一助となり、少しでも多くの有権者が自分の意思を持って投票所に足を運んでくだされば幸いです。最後までお読みいただき、ありがとうございました。民主主義の主役である皆さん一人ひとりが、その主役としての役割を存分に果たされることを願っています。
【参考資料】
■ 政党公式サイト・政策資料
- 自由民主党「政策」ページ|https://www.jimin.jp/policy/
- 立憲民主党「政策・公約」|https://cdp-japan.jp/
- 日本維新の会「政策・マニフェスト」|https://o-ishin.jp/policy/
- 公明党「重点政策」|https://www.komei.or.jp/policy/
- 日本共産党「政策と主張」|https://www.jcp.or.jp/
- 国民民主党「政策・ビジョン」|https://new-kokumin.jp/
- れいわ新選組「政策一覧」|https://reiwa-shinsengumi.com/
- 社会民主党(社民党)「政策と活動」|https://sdp.or.jp/
■ 公的機関・制度関連
- 総務省「選挙制度の概要」|https://www.soumu.go.jp/senkyo/senkyo_s/
- 参議院「参議院とは」|https://www.sangiin.go.jp/
- 衆議院「衆議院の仕組み」|https://www.shugiin.go.jp/
- 日本国憲法(e-Gov法令検索)|https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=321CONSTITUTION
■ 世論調査・選挙データ・報道記事
- NHK「世論調査」|https://www.nhk.or.jp/politics/survey/
- 読売新聞・朝日新聞・毎日新聞・産経新聞 各社「参院選2025特集」および党首討論会報道
- 共同通信「各党公約比較記事」「選挙戦序盤情勢」など
- 選挙ドットコム|https://go2senkyo.com/
- 政治山(VOTE FOR)|https://seijiyama.jp/
■ 民主主義・政治参加に関する研究・啓発
- 明るい選挙推進協会|https://www.akaruisenkyo.or.jp/
- 東京財団政策研究所|https://www.tkfd.or.jp/
- PHP総研「政治と有権者意識」関連レポート|https://research.php.co.jp/
- 内閣府「国民生活白書(政治意識調査)」|https://www5.cao.go.jp/seikatsu/index.html