2022年以降、日本は久々のインフレ局面に突入しました。長年のデフレで染み付いた「デフレマインド」を「インフレマインド」へ切り替え、物価上昇に負けない生活防衛術と資産形成術が求められています。本記事では、特に給料が上がりやすい若者世代と上がりにくい40代以上それぞれの視点から、インフレ時代を賢く生き抜く知恵と具体的戦略(デフレマインドからの転換、投資術、節約術、収入アップの方法、インフレに強い業種やビジネスモデル、年代別のアドバイス)を分かりやすく解説します。

「給料はなかなか増えないのに、最近なんだか物価が高い…」そう感じて戸惑っている方は多いのではないでしょうか。実際、2022年の春以降、日本で物価上昇(インフレ)が顕著になり、30年以上ぶりの高い物価上昇率を記録しました。それまで日本は長らくデフレもしくは超低インフレ状態が続いており、多くの人が「物価は上がらないもの」という感覚=デフレマインドを身につけていました。しかし今や時代は様変わりし、人々の意識にも変化が生じています。実際、この1年で消費者が「物価は毎年上がるもの」と考えるようになるなど、デフレマインドは大きく転換し始めました。政府の物価対策や企業の値上げが相次ぐ中で、給料が上がりやすい若者世代と、上がりにくい中高年世代とでは、インフレへの向き合い方にも差が出ています。

本記事では、インフレ時代を生き抜くために必要な知恵と戦略をたっぷりと紹介します。中心テーマである「デフレマインドとインフレマインドの違いと転換」を軸に、インフレ下での効果的な投資戦略、物価高に負けない節約の工夫、収入を増やす働き方やスキル選択、さらには物価上昇に強い業種・ビジネスモデルについて解説します。そして記事の後半では、特に「若い世代」と「40代以上」の2つの世代に焦点を当て、それぞれに合った具体的な行動例と考え方のヒントを示します。難しい専門用語は極力避け、身近な例え話や具体例を交えていますので、肩の力を抜いて最後までお読みください。インフレ時代を賢く乗り切るヒントがきっと見つかるはずです。

目次

  1. デフレマインドとインフレマインドの違いと転換
  2. インフレ時代の投資戦略 – お金の守り方・増やし方
  3. インフレ下での防衛的な消費の工夫 – 賢い節約術とは
  4. 収入を増やすための働き方・スキルの選び方
  5. 物価上昇に強い業種や収益モデルを知ろう
  6. 若者世代と40代以上に向けた具体的な行動例と考え方
  7. まとめ – インフレ時代に必要なマインドセット

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1. デフレマインドとインフレマインドの違いと転換

まず最初に押さえておきたいのが、デフレマインドとインフレマインドの違いです。これは簡単に言えば、物価や経済に対する私たちの心理的な構え方の違いです。デフレマインドとは、日本のように長期間物価が下落・停滞する環境で人々に染み付いた考え方や消費行動のことです。デフレ時代の日本では「どうせ景気は良くならない」「将来が不安だから貯金しておこう」といった将来への悲観的な心理が広がりました。具体的には、少しでも安い商品を選び、欲しいものも「もう少し待てば安くなるかも」と購入を先送りにする傾向です。企業側もそんな消費者心理に合わせて値下げ競争を続け、さらに「値下がりを待つ」心理を助長するという悪循環がありました。たとえば、新製品のテレビが発売されても「型落ちするまで待てば安く買える」と考えて購入を控える、といった行動はデフレマインドの典型例でしょう。デフレマインド下では、お金はできるだけ使わず手元に置いておくもの、という感覚が強くなります。

一方でインフレマインドとは、物価が上がることを前提とした心理状態です。世界的に物価上昇が起き始めた2022年前後から、日本でもこのインフレマインドへの転換が見られるようになりました。日本銀行の調査でも、「1年後に物価は上がる」と答えた人が8割に達したという結果が出ています。つまり、長年「物価は据え置きか下がる」と信じていた日本の消費者も、「これからは物価が上がるのが当たり前」と見方を変え始めたのです。インフレマインドでは、必要なものは今のうちに買っておかないと後で値上がりして損をする、という発想にシフトします。実際、このところのエネルギー価格高騰や品薄による値上がりを目の当たりにして、「欲しい物があるなら今のうちに買っておこう」と感じる場面が増えた方も多いでしょう。「現金のまま寝かせておくと価値が目減りするくらいなら、有効に使おう」とお金の使い方にも積極性が出てくるのがインフレマインドの特徴です。

では、このデフレマインドからインフレマインドへの転換が具体的に私たちの行動にどう影響しているのでしょうか。最近の動きを見ると、消費者・企業・労働者それぞれに変化が出ています。消費者は既に述べたように「物価は上がるもの」と予想するようになり、多少の値上げではすぐには買い控えしなくなりました。実際、2022年頃から企業が相次いで商品価格を値上げしていますが、極端に消費が冷え込むという事態には至っていません。「値上げしても消費者は逃げない」という認識を企業側が持ち始めたことも報じられています。これは企業側のマインドが変わった証拠です。以前は「コストが上がってもおいそれと価格に転嫁できない…お客様が離れてしまう」と値上げをためらっていた日本企業が、今では徐々に「適正に価格転嫁しないと自社がもたない」と考え、商品やサービスの値上げに踏み切るケースが増えました。たとえば大手食品メーカー各社も2022年以降何度も値上げを実施していますが、それでも売上を維持している例もあります。もちろん値上げにはリスクも伴うため、企業は単に価格を上げるだけでなく「内容量を減らす」「品質や付加価値を上げて価格アップに見合う満足感を提供する」など様々な工夫をしています。実際、中小企業の経営者からも「インフレ時代は商品・サービスをブラッシュアップして、品質や付加価値を高めつつ価格を上げることが重要だ」という指摘が出ています。

労働者(私たち働く人々)のマインドにも変化があります。デフレが当たり前だった時代、労働組合でさえ「ベースアップ(基本給の底上げ)なんて無理だろう」と最初から諦めムードが漂っていました。しかし足元ではその姿勢も転換しつつあります。2023年の春闘(春の賃金交渉)では、中小企業も含め多くの企業で久々にベースアップ要求が相次ぎ、約30年ぶりの高い賃上げが実現しました。連合(労働組合の中央組織)の集計によれば、2023年春闘の賃上げ率は平均3.6%超となり、昨年を上回りました(大企業中心ではありますが)。これも「物価上昇に対応するには給料も上げねば」というインフレマインドの現れと言えます。実際、企業から従業員への「インフレ手当」支給の動きも報じられています。「物価高で実質賃金が減っては働く意欲に影響する」として、一時金を支給した企業もありました。かつては考えられなかった対応ですが、企業も人材確保のためにインフレに対応せざるを得なくなっているのです。

以上のように、デフレ時代とはガラリと状況が変わりつつあります。大事なのは、私たち一人ひとりも発想を転換することです。デフレマインドにしがみついたままだと、インフレの波に飲み込まれて資産や生活水準を奪われかねません。例えば昔は「貯金は美徳、投資は危険」と言われたかもしれませんが、今は「貯金だけでは目減りする可能性がある、賢く投資して増やす工夫も必要」という時代です。また「安いものが正義」から「適切なお金を払い、価値あるものを得る」へ意識を変えることも大切でしょう。言い換えれば、お金やモノの価値に対する感覚をアップデートする必要があるのです。次章以降では、その具体的な方法について見ていきましょう。

2. インフレ時代の投資戦略 – お金の守り方・増やし方

インフレ時代において、お金との付き合い方で最も重要になるのが「資産を目減りさせないこと」です。物価が毎年上がっていく環境では、ただ銀行預金にお金を置いておくだけでは購買力(お金の実質的価値)がどんどん減ってしまいます。例えば年率3%のインフレが続けば、100万円の貯金は1年後には実質97万円分の価値しか持たなくなる計算です。「何もしないことが最大のリスク」という状況に変わりつつあるのです。そのため、インフレ時代には資産運用(投資)を上手に活用してお金の価値を守り、できれば増やしていくことが求められます。

インフレに強い投資とは?

従来、日本では「投資は怖いし、自分には関係ない」と預貯金中心だった人も多いですが、インフレが進むとその考え方も見直す必要があります。実は株式投資は伝統的にインフレに強いと言われます。インフレ局面では企業の売上高も名目上増えることが多く、業績が向上する企業の株価は上昇しやすい傾向があるためです。ただし、あまりに急激なインフレ(たとえば年15%を超えるような極端な物価高)になると経済が不安定化し株価も暴落しかねません。幸い、現時点で日本の物価上昇率はせいぜい数%程度と見込まれ、適度なインフレであれば株式は有望な投資先であると考えられます。実際1970年代のアメリカでは、高インフレ下でも電力など公益企業の利益は安定しており、株価も堅調でした。インフレ下でも成長が期待できる企業や業界に投資をすれば、インフレ率以上のリターンを得て資産の目減りを防ぐことが可能です。

具体的な投資戦略としては、分散投資と長期投資がキーワードになります。インフレ時代だからといって特殊な投機に走る必要はなく、むしろ焦らずコツコツと王道の資産運用をするのが堅実です。まず現金だけを持ち続けるのは賢明とは言えません。余剰資金は株式や投資信託、不動産などに分散して投じるのが基本です。初心者であれば、インデックスファンド(市場全体に連動する投資信託)を毎月積み立てて購入する方法がおすすめです。積立投資はドルコスト平均法の効果で、高値掴みのリスクを抑えつつ長期で資産形成ができます。例えば新NISA(2024年から制度拡充された少額投資非課税制度)を活用すれば、年間360万円までの投資で得た利益が非課税になります。これはインフレ時代の強い味方です。若い世代であれば積極的にNISA枠を使い、20年30年スパンで資産を増やすことを狙いましょう。

また、外貨資産を持つこともインフレ対策として有効です。インフレが進行すると日本円の価値は相対的に下がりやすく、円安(円の対外価値が下がる)につながる場合があります。実際、2022年には急激な円安も生じました。こうした局面では米ドルやユーロなど他国通貨建ての資産を持っていると為替差益でインフレによる損失を相殺できることがあります。例えばドル建ての預金や外貨MMF、あるいは外国株式や海外ETFに投資する方法があります。特に日本と比べて金利の高い国の通貨や債券は、金利収入(利子)でもインフレをカバーできるメリットがあります。ただし為替変動のリスクもあるため、闇雲に全資産を外貨にするのは避け、資産の一部を外貨建てに分散させるイメージが良いでしょう。

さらに、実物資産への投資も検討に値します。インフレに強い代表的な実物資産として金(ゴールド)が挙げられます。金は「有事の避難先」として知られますが、高インフレ下でも価値を保ちやすい傾向があり、実際1970年代の高インフレ期のアメリカで金価格は大きく上昇しました。金地金そのものを買うほか、手軽な方法として純金積立や金ETFへの投資もあります。同様に不動産もインフレ耐性がある資産とされています。物価が上がれば新築物件の建築コストも上がるため、既存の不動産の資産価値が相対的に高まる場合があります。また賃貸物件であれば、需給によっては家賃収入が増える可能性もあります。ただし日本の不動産市場は地域差や物件差が大きく、供給過多エリアではインフレでも値上がりしないこともある点に注意が必要です。不動産に直接投資するのが難しければ、少額で不動産ポートフォリオに投資できるJ-REIT(不動産投資信託)という商品もあります。これも高配当利回りを狙えるので、インフレ時に物価上昇率を上回るリターンが期待できます。

高配当株もインフレ対策として有効な選択肢です。インフレ下では株価が乱高下することもありますが、年間3~4%の配当利回りを安定して出す企業の株であれば、株価の値上がりがなくとも配当収入で物価上昇分を補える可能性があります。例えば生活必需品メーカーやインフラ関連株などは比較的高配当であることが多く、インフレに負けない現金収入源となりえます。

最後に、インフレ時代の投資で忘れてはならないポイントは「短期の値動きに振り回されないこと」です。物価上昇局面では金利政策の変更などで市場が不安定になることもあり、株価や為替が日々大きく動くことがあります。2022~2023年にかけても、米国の急速な利上げを背景に世界的に株価が調整する局面がありました。しかし、そこで狼狽して投資をやめてしまっては、長期的なインフレヘッジの効果を得られません。一喜一憂せず長期的視点で持ち続けることで、時間を味方に付けて資産の成長を図ることが大切です。焦らずコツコツと積み立て、定期的にポートフォリオを見直しつつ、インフレと上手に付き合っていきましょう。

3. インフレ下での防衛的な消費の工夫 – 賢い節約術とは

インフレ時代に資産運用が重要なのは確かですが、日々の家計のやりくりも同じくらい大切です。物価高で家計負担が増える中、上手に消費をコントロールして無理なく節約する工夫が求められます。ただし、やみくもに出費を切り詰めるだけでは長続きしませんし、生活の潤いを失ってしまいます。ここではインフレ時代ならではの「防衛的な消費」の知恵を紹介します。それは端的に言えば、メリハリのある賢い消費を心がけることです。

「メリハリ消費」でストレスなく節約

長引く物価高の中で今注目されているのが、「メリハリ消費」という考え方です。これは簡単に言えば、「普段は徹底的に節約するけれど、自分が本当に価値を感じるものにはお金を惜しまない」というオンとオフの使い分けです。物価上昇で毎日のやりくりに気を使う生活が続くと、誰しも「節約疲れ」してしまいます。実際、特に主婦層を中心に「節約ばかりでストレスが溜まる」という声も出ているようです。そこで、日常の必需品やあまり重視しない分野ではとことん節約する一方で、自分の趣味や楽しみにつながる分野には思い切ってお金を使うことで、心の満足度を保ちながら全体として支出を抑える工夫が広まっています。これは「節約と消費の二刀流」とも呼ばれ、インフレ時代を賢く生き抜く新戦略と言えるでしょう。

例えば、「普段の食費や日用品は底値を徹底的に追求して節約するけれど、たまの外食はお気に入りの店でリフレッシュする」「服や家電は必要最小限に押さえる代わりに、自分の趣味(旅行やライブなど)にはお金を惜しまない」といった具合です。こうすることで、毎日24時間気を張って節約しなくてもトータルでは家計を守りつつ、生活の楽しみも失わずに済むのです。実際、ある市場調査では「ここ数年で価値観が変化し、より吟味して物を買うようになった」という人が約30%いるという結果もあります。「本当に価値のあるものだけ買う」という「吟味消費」の傾向も強まっているのです。インフレ時代は、ものの値段が上がる分、私たち消費者も一層「その商品やサービスに見合う価値があるか」を厳しく見極めるようになります。言い換えれば、高い買い物をするときは「自分にとって本当にそれが必要か?価格相応か?」をしっかり考える習慣を持ち、逆に価格以上の満足を与えてくれるものには適切にお金を配分する、ということです。

今日からできる具体的な節約術あれこれ

メリハリ消費の考え方をベースにしつつ、日常生活で今すぐ実践できる節約術も確認しておきましょう。以下に防衛的な消費の具体策をいくつか挙げます。

買い物前に計画を立てる: スーパーに行く前に冷蔵庫や食品棚の在庫をチェックし、買うものをリストアップしてから出発しましょう。衝動買いや重複買いを防ぎ、無駄な支出を削減できます。特売の貼り紙に釣られて余計な物を買ってしまうのも防げます。「必要なものだけ買う」を徹底するだけで、月に数千円~1万円以上節約できるケースもあります。

食品ロスを減らす工夫: 食べ残しや賞味期限切れで食品を捨ててしまうのはお金を捨てているのと同じです。料理は食べきれる分だけ作る、外食では食べきれる分だけ注文するよう心がけましょう。万一残ってしまった料理も、翌日にリメイクして食べ切るなど工夫すれば無駄になりません。また、すぐに食べる予定のものはスーパーであえて賞味期限の近い商品を選ぶ(値引きされていることも多い)とか、スーパーで「欠品(売り切れ)でも慌てない・文句を言わない」意識を持つといったことも、実は食品廃棄を減らし社会全体のコスト減につながります。インフレ時代、お店側も在庫を抱え過ぎないようにしているため、消費者もそこに協力する視点が大切です。

冷凍食品や保存の利く食材を活用: 野菜や果物、生鮮食品は天候不順や需要増で値上がりしやすいですが、冷凍食品は比較的価格が安定しています。栄養価も最近の冷凍技術で損ないにくくなっていますし、必要な分だけ使えて食品ロス削減にも役立ちます。上手に活用して、生鮮品の高騰に備えましょう。またお米やパスタなど主食類、トイレットペーパーや洗剤など長期保存できる日用品は安いときにまとめ買いして備蓄しておくのも一つの手です。例えば「特売のときにお米を多めに買っておき、値上がりしている時期は買わずに済ませる」というだけでも、年間では馬鹿にならない節約効果があります。ただし買いすぎには注意で、備蓄が腐らせては元も子もありません。家のスペースと消費ペースを考えて無理のない範囲で行いましょう。

ポイントや割引を最大活用: 日々の支払いはなるべくキャッシュレス決済でポイントを貯めるようにすると、塵も積もれば結構な額になります。クレジットカードやQRコード決済の還元キャンペーン、商店街のポイント倍増デーなど、見逃さずに活用しましょう。ただし「ポイント欲しさに不要な物まで買う」ことだけは避けてください。本末転倒にならないよう気をつけつつ、もらえるものはもらう精神でいきます。

固定費の見直し: 節約というと食費や日用品費ばかり注目しがちですが、実は効果が大きいのは家賃・保険料・通信費などの固定費です。インフレで電気・ガス代も上がっていますから、エネルギーの契約プランを見直してお得なプランに変える、スマホの料金プランを格安なものに変更する、使っていないサブスクサービスを解約する、といった見直しをしましょう。例えば不要な動画配信サービスをやめれば月1,000円、格安スマホに替えて月3,000円減らせれば年間約5万円の節約です。保険も、内容を精査して必要以上の補償があれば減額を検討します(ただし安易に解約せず代替策を確認)。一度見直してしまえばその後ずっと効果が続くので、忙しい人ほど固定費チェックはやる価値があります。

エネルギー・交通の節約: 省エネを心がけることもインフレ下では重要です。エアコンの温度設定を夏は1度高め、冬は1度低めにするだけでも電気代は大きく違いますし、LED照明への切り替えも効果的です。自治体や政府の省エネ情報サイトには、家庭でできる具体的な節電・節ガスの工夫が多数紹介されています。また車を使う人はエコドライブ(無駄な急加速をしない、アイドリングストップをする等)を実践すると燃費が改善します。可能であれば徒歩や自転車へのシフトも有効です。ガソリン代の節約になるだけでなく運動不足解消にもなり、一石二鳥ですね。

こうした個々の節約術はどれも地味かもしれません。しかし、インフレで家計が圧迫される局面では「チリツモ」(塵も積もれば山となる)の精神が非常に大切です。例えば毎日の食費を500円抑えられれば月1.5万円、年間18万円の節約ですし、電気代を月2000円減らせれば年間2.4万円になります。これらの積み重ねを将来の備えの投資に回せば、さらに資産形成も進むでしょう。もちろん、節約のしすぎでストレスを溜めては本末転倒ですから、前述のメリハリ消費を意識しながら無理なく続けられる工夫を取り入れてください。「我慢=美徳」ではなく、「工夫=美徳」と考えて楽しみながら節約するのがコツです。例えばゲーム感覚で家族と「今月は先月より食費1割減を目指そう!」とチャレンジしてみるのも良いでしょう。節約は決して惨めな行為ではなく、賢く生きるための創意工夫なのだと前向きに捉えたいものです。

4. 収入を増やすための働き方・スキルの選び方

インフレ時代を乗り切る方程式はシンプルに言えば「支出を減らし、収入を増やす」ことです。ここまで支出(節約)と資産運用について見てきましたが、もう一つ重要なアプローチが収入アップです。物価が上がってもそれ以上に収入が増えれば、生活はむしろ楽になります。ではインフレ時代において、どうすれば収入を増やすことができるのでしょうか?若者世代と40代以上、それぞれの立場で考えてみましょう。

若い世代:チャンスを活かし成長産業へ

まず20~30代の比較的若い世代にとって、インフレ時代はある意味チャンスでもあります。というのも、日本企業の多くで新卒初任給の引き上げや若手の待遇改善が進み始めているからです。例えば2023年以降、大手企業を中心に新卒社員の初任給を大幅アップする動きが相次ぎました。三井住友銀行が2026年入行の大卒初任給を25.5万円から30万円に引き上げると発表したニュースは象徴的で、メガバンク初の30万円台ということで話題になりました。他の企業でも「新卒の初任給を一律5万円アップ」という例や、IT企業が新卒年収1000万円超のプランを示すなど、人材獲得競争の激化から若手に厚く報いる流れが出ています。この背景には、インフレや人手不足を受け「優秀な若手を確保するためには給与を上げざるを得ない」という企業側の危機感があります。年功序列型の賃金体系にも見直しの波が来ており、若手でも能力次第で高報酬を得やすい環境に変わりつつあるのです。

この状況を踏まえて、若い世代が意識すべきは自分の市場価値を高めるスキルを身につけることです。成果主義や実力主義を取り入れる企業が増えていますので、スキルアップすれば昇給・昇格に直結しやすくなりま。例えばITエンジニアやデータサイエンティストなどの職種は慢性的な人材不足で、専門スキルがあれば20代でも高年収を狙えます。また英語など語学力もグローバル化に伴い評価されますし、営業力や企画力など職種に応じた専門性を伸ばすことも重要です。「資格を取って年収アップ」というキャッチコピーもありますが、確かに業務に直結する資格やスキルであれば昇給の武器になります。例えば中小企業診断士や簿記、IT系資格(基本情報技術者など)は昇進要件にしている会社もあります。会社が費用を補助してくれるケースもあるので、使える制度は活用しましょう。

さらに、若い方ほど転職を前向きに検討する価値があります。デフレ期には「一つの会社にしがみつく」傾向が強かったかもしれませんが、人材流動化が進む今、より良い条件の職場に移るのは珍しいことではありません。実際、リクルートなどの調査によると20代の転職率は近年上昇しています。インフレ下で好業績な業界・企業は思い切った中途採用で人材を集めており、年収アップのチャンスがあります。特にDX(デジタルトランスフォーメーション)人材やウェブマーケターなど新しい分野は若手に大きな役割が期待されています。「成長産業へキャリアチェンジ」というのも選択肢の一つです。例えば今までサービス業で低賃金に苦しんでいた人が、プログラミングを学んでIT業界に転じ年収を大幅に上げた例もあります。もちろん簡単ではありませんが、自己投資を惜しまず新スキルを身につけることが将来の大きなリターンにつながるでしょう。

一方で、若いからこそ注意したいのはインフレに浮足立って短絡的なお金儲けに走らないことです。巷には「〇〇に投資すれば楽に儲かる」といった甘い話もありますが、そうしたものに飛びつくのは危険です。焦らず、堅実に自分の価値を高めることが最終的に安定した収入増につながる点を忘れないでください。

40代以上:経験を活かしつつ新しい収入源を

次に、40代以上のミドル・シニア世代です。この世代は若手と比べると会社でのポジションは上がっていても、給与が頭打ちになっていたり、会社によってはむしろ役職定年などで下がり気味だったりする場合もあります。加えて子どもの教育費や住宅ローンなど支出面の負担も大きく、インフレで生活が苦しいと感じている方も多いかもしれません。事実、物価上昇の影響は高齢者ほど大きいという分析もあります。この年代が収入を増やすにはどうすればよいでしょうか。

一つの答えが「マルチ収入源化」、平たく言えば副業です。日本では昔は副業禁止の会社も多かったですが、2018年頃から政府が副業推進を掲げ、今では多くの企業が就業時間外の副業を容認するようになりました。実はインフレ時代において、給与以外の収入源を確保することはほぼ必須といっていい状況です。なぜなら、インフレによって実質賃金が目減りしても、会社からの給与だけではカバーしきれないケースが多いからです。実際、日本の賃金はここ30年ほとんど横ばいで大きな変化がありません。最近ようやく上昇傾向が見られるものの、その伸びは緩やかで物価上昇率に追いついておらず、実質賃金は横ばいか減少しているとも言われます。物価が上がっても給与が上がらない現実に備えるには、「収入源を複数持つ」ことが有効な戦略なのです。

副業というと難しく聞こえるかもしれませんが、ポイントは「自分の得意なこと・経験を活かせること」から始めることです。幸い40代以上の方は、それまでの仕事や趣味で培ったスキルや知識があるはずです。それを副業に結び付けられないか考えてみましょう。例えば、長年営業畑を歩んできた人ならそのノウハウを活かしてフリーの営業コンサルタントやオンライン営業講師として副収入を得ているケースがあります。経理や法務の知識がある人なら、クラウドソーシングで中小企業の記帳代行や契約書チェックの仕事を請け負うことも可能です。趣味で続けてきた写真撮影が得意ならストックフォトサイトで写真販売をしたり、料理が得意ならレシピサイトに投稿して収入化する例もあります。最近ではYouTubeやブログ、SNSで情報発信して広告収入や講演料を得る人も増えています。要は何でもマネタイズできる時代です。

自分の得意分野で副業を始めるメリットは、新しく学ぶ時間を大幅に省けることと、失敗リスクが低いことです。慣れ親しんだ分野であればノウハウもネットワークも既に持っている場合が多く、比較的スムーズに軌道に乗せやすいでしょう。さらに副業を通じてスキルアップすれば本業にも好影響が出ますし、市場価値も高まります。「本業×副業」で相乗効果が生まれ、思わぬ転職や起業のチャンスにつながることもあります。実際、副業から派生して定年後にセカンドキャリアを築いた例も少なくありません。例えばある50代の方は在職中に趣味のプログラミングで副業を始め、退職後は企業のIT顧問として独立しました。副業は将来の不安を和らげてくれる保険にもなります。公的年金だけでは老後資金が不足すると言われる中、今のうちから別の収入源を育てておくことは、老後の生活を大きく軽減してくれる可能性があります。

もちろん、全ての40代以上が副業できるわけではないでしょう。長時間労働で副業の余裕がない人や、職種的に副業禁止が厳しい場合もあります。その場合は、副業以外での収入アップ策を探ります。例えば社内でのキャリアアップもまだ遅くありません。管理職への昇進や専門職への転換で役職手当や技能手当が増える可能性があります。インフレ下では企業も人材流出を恐れており、「この人に辞められては困る」という人材には特別昇給や慰留策を講じる例も出ています。自分の市場価値を客観視しつつ、必要なら思い切って上司に相談してみるのも一つの手です。「物価がこれだけ上がっているので、生活維持のために給与の見直しをお願いできないでしょうか」と直談判したケースで実際に増額を勝ち取った例も耳にします。ただし交渉の際は、日頃から成果をアピールして信頼を得ておくことが大前提です。

このように、40代以上は「現状維持」から一歩踏み出す勇気が大切です。デフレ時代に染み付いた「今の仕事だけで定年までなんとか」という考えは、インフレ時代には通用しにくくなっています。一つの収入源に頼り切りだと、それがインフレに追いつかなかったとき一気に生活が苦しくなるリスクがあります。幸い人生100年時代とも言われますので、40代・50代からでも十分新たな挑戦は可能です。学び直し(リスキリング)をして新分野に進む方もいますし、部下に教える立場から自分自身が学ぶ立場に戻ることで得られる刺激もあるでしょう。インフレという外部環境の変化を、逆に自分の働き方やスキルを見直す良い契機と捉えてみてください。

5. 物価上昇に強い業種や収益モデルを知ろう

インフレ時代を語る上で、どの業種やビジネスモデルが有利かを知っておくことも有益です。これは、個人のキャリア選択や投資判断にも関わってきます。「どうせ働くならインフレに強い業界がいい」「投資するならインフレで伸びるビジネスにしたい」と思うのは当然でしょう。では実際、インフレ局面で強い業種・弱い業種にはどのようなものがあるのでしょうか。

インフレで恩恵を受けやすい業種

統計的な分析によれば、物価上昇時に株価が上がりやすい業種の代表格は資源・エネルギー関連です。ある研究では、消費者物価指数が1%上がると「鉱業」セクターの株価が平均21.2%も上昇するというデータが示されました。これはインフレによって石油・金属など資源価格が上がれば、鉱山権益を持つ企業の資産価値や収益が大きく向上するためです。同様に石油・石炭製品業界(石油元売り会社など)も物価上昇で在庫の評価益が増えるためメリットが大きい業種として挙げられています。要するに、インフレ=資源高の局面では、資源を持っている企業が儲かりやすいというわけです。例えば世界的に原油価格が上がれば、産油国の国営企業や大手商社などは潤いますし、金や銅などのコモディティ価格上昇時には商社や鉱山会社が利益を上げます。

また意外に思われるかもしれませんが、「適度なインフレ+景気回復」の状況では航空業界なども業績が良くなる場合があります。燃料費高騰はマイナス材料ですが、それ以上に人々の旅行需要が増えて収入が伸び、結果として株価が上がったという分析もあります。もっとも、航空業は燃料費リスクが大きいので、必ずしもインフレに強いとは言えず、ここでは特殊なケースでしょう。

より一般的に言えば、「価格転嫁力」が高い業種はインフレに強いです。価格転嫁力とは、コスト上昇分を製品・サービスの価格に上乗せして販売できる力です。例えば食品・日用品メーカーは生活必需品を扱うため需要が底堅く、多少値上げしても売れ続けることが多いです。実際、大手食品メーカーは2022年以降に何度も値上げをしましたが、消費者も「仕方ない」と受け入れて買い続けている商品が少なくありません。「みんなが必要とするもの」を扱う業種はインフレ下でもビジネスが安定しやすいのです。またブランド力のある企業も強いです。高級ブランド品や人気のスマートフォンなどは値上げしてもファンが離れにくく、むしろ「次の値上げ前に買っておこう」という動きすらあります。このように需要の価格弾力性が低い商品(値段が上がっても需要が大きく減らない商品)を持つ業種は、インフレでも利益を確保しやすいのです。

インフラ・公益系も基本的にはインフレに強いビジネスモデルです。電力・ガス・水道などの公益企業は、原料費が上がれば規制の枠内で料金に転嫁する仕組みがあります。アメリカの例になりますが、1970年代のオイルショック時でも米国公益企業の利益は安定して推移しました。これは公共料金がコスト上昇分を反映して値上げできる制度のおかげでした。日本でも電気料金は「燃料費調整制度」で燃料費高騰分を料金に上乗せできます。水道料金も自治体判断で改定可能です。このようにコスト増がそのまま収入増につながる仕組みを持っている業種は、インフレで業績が悪化しにくいのです。

不動産業も、適度なインフレ環境では恩恵を受けやすい業種です。インフレになると土地や建物の価格も上昇する傾向があるため、保有不動産の含み益が増えますし、新築販売価格も上げられます。また賃貸では契約更新時に賃料を見直すことも可能です(日本ではなかなか難しい面もありますが)。事実、地価が上昇局面では不動産業の利益率が改善するケースが多く見られます。

インフレで不利になりやすい業種

反対に、インフレの逆風をまともに受けやすい業種もあります。一言で言えば「コスト上昇は早いが価格転嫁が遅れてしまう業種」です。具体的には電機・精密機械などの製造業が典型例です。前述の分析では、物価が1%上がると電気機器(電機メーカー)セクターの株価は平均11.3%下落するという結果が出ました。これは、素材や部品などの製造コストがインフレで上がっても、製品価格にすぐには転嫁できず利益が圧迫されるためです。さらに、値上げしようものなら消費者の買い控えで売上数量が落ちてしまい、利益が減るという悪循環に陥りがちです。例えば家電業界では、原材料費や物流費が高騰しても各社の競争が激しいため簡単には値上げできず、泣く泣く企業努力で吸収している場合があります。結果として「売上は増えないのに費用だけ増える」状態になりがちです。

同様にサービス業もインフレではコスト増(人件費や材料費)が重くのしかかりますが、価格に上乗せするとお客さんが離れてしまいやすい分野では厳しいです。例えば外食産業などは材料費も人件費も上昇していますが、メニュー価格を大幅に上げれば客離れが心配で、ぎりぎりの線を探りながら少しずつ値上げしている状況です。利益率は下がりやすく、体力のない企業ほど苦しくなります。また海運業も燃料費高騰がダイレクトに効いてくる割に、運賃への転嫁は市況に左右されて難しい面があり、インフレでは苦戦するケースがあります(海運は国際市況で運賃が乱高下する特殊性もありますが)。

要するに、「インフレ=コスト増」と「インフレ=売上増」のバランスが悪い業種はデメリットが大きいのです。そうした業種で働く個人にとっては、会社の業績悪化は自分の賞与や昇給にも響きます。投資の観点でも、インフレ局面ではこれらの業種には慎重になる必要があるでしょう。

ビジネスモデルの工夫でインフレに強くなる

業種だけでなく、ビジネスモデル(収益モデル)の工夫次第でインフレ耐性を高めることも可能です。たとえば先述のように、公益企業のコスト連動型料金モデルは強力です。他にも、サブスクリプションモデル(定額課金)はインフレ耐性が高い場合があります。月額料金制のサービスは、一度契約してもらえれば物価とは関係なく安定収入が見込めますし、インフレが続くようなら徐々に料金を改定していくこともできます。例えば動画配信サービスやソフトウェアのクラウドサービスなどは、サービスの価値向上を図りつつ数年に一度値上げすることで対応しているケースがあります。顧客にとっても毎月少しの値上げなら受け入れやすいものです。

また高付加価値戦略も重要です。船井総研のレポートでも「高付加価値を付けて商品を高く売るビジネスモデルへの転換が必須」と指摘されています。インフレ時代に生き残る企業経営の方程式は「圧倒的集客 × 圧倒的高付加価値」だと言います。つまり、ただ安さで集客するのではなく、自社ならではの価値でお客様を惹きつけ適正な価格を払ってもらうことが大切です。安売り競争はコスト増に耐えきれず崩壊しますから、そうではないモデルへの転換が求められます。例えば飲食店でも、材料費高騰に対応するためメニューを工夫して独自性を出し、値上げしても来てもらえる店作りをしたところもあります。小売業でも、ディスカウントストアの雄であるドンキホーテ(PPIH)は「インフレにも強い“稼げる小売企業”」を標榜し、単に安さだけでなく驚きや楽しさを提供する売場作りで業績を伸ばしています。このように付加価値×集客力を追求するビジネスは、物価上昇下でも強さを発揮します。

個人としては、こうしたインフレ耐性のある業種・企業を見極めてキャリアや投資先を選ぶというのも戦略の一つでしょう。例えば資源関連やインフラ関連企業への就職・転職は安定感がありますし、ITスキルがあるなら需要旺盛なDX分野に関わる企業で働くのも良いでしょう。また投資においては、インフレが続くと思えば鉱業株やエネルギー株、高配当株、REIT、コモディティ(金など)を組み入れるといったポートフォリオ調整が考えられます。ただしあまり極端な集中投資はリスクが高いので、分散の中で比重を高める程度に留めるのが無難です。

いずれにせよ、インフレに強い業種とは「お客様への価値提供と価格設定の主導権を握っている業種」と言えます。逆に弱いのは「価格を自由に決められずコストに振り回される業種」です。この視点を持っておくと、ニュースで「○○業界で値上げ相次ぐ」「△△業界で業績悪化」などと聞いたときに、なぜそうなるのか理解できるでしょう。自分の働く業界が後者に当てはまるなら、社内でどう対策できるか提案してみるとか、思い切って異業種へのチャレンジを検討するのも一つの手かもしれません。

6. 若者世代と40代以上に向けた具体的な行動例と考え方

若者世代―攻めを恐れず「資産形成×スキル形成」の同時進行を

20~30代は時間という最大の武器を持つ。インフレで貯金の価値が薄まるリスクを避けるには、まず「毎月いくら投資に回すか」を給料日と同時に決め、自動積立で実行する習慣づけが出発点になる。新NISAを利用して世界株式や米国株式のインデックスファンドをコアに据え、暴落局面でも買い続ける仕組みを先に作れば、相場を読むストレスから解放される。並行して自己投資に割く時間とお金を明確に区分し、オンライン講座や資格取得で市場価値を高めると良い。プログラミングやデータ分析などDX関連スキルは依然として高需要だし、英語や動画編集など汎用性のあるスキルは副収入の糸口にもなる。昇給交渉や転職をタブー視せず、「年に一度は自分の市場価格を確かめる」くらいの姿勢でいれば、インフレ分を上回る年収アップに繋げやすい。生活面では節約と娯楽を対立させず、無駄な定額サービスの整理や食費の最適化でキャッシュを生みつつ、価値を感じる趣味には適度に投じてストレスを抑える“メリハリ消費”を実践したい。インフレは若者にとってキャリアと資産づくりを同時に加速させる好機だと前向きに捉えよう。

40代以上―経験を資産に変え「守り+副収入+交渉力」を磨く

ミドル・シニア世代は、教育費やローンなど固定支出の重さと、賃金の頭打ちリスクを同時に抱える。まず真っ先に取り組みたいのは家計の筋肉質化だ。通信費や保険料など“埋没コスト”を洗い出して固定費を落とし、浮いた分を投資と老後資金の上積みに回すと、インフレによる実質目減りを最小化できる。次に、自身のキャリア資産を副業やコンサル業務に転換する道を探りたい。長年培った専門知識や人脈は若い世代にない強みであり、オンライン講師、業務代行、ライティング、翻訳など、スモールビジネスへの展開余地は広い。副収入が月数万円でも、長期的には大きなキャッシュフロー防衛線となる。さらに、社内ポジションを武器にベースアップの交渉やリモート・短時間正社員制度の導入提案など、労使協議のテーブルに自ら参加する姿勢が、実質賃金を守る現実的な手段になる。最後に、退職金一括運用やiDeCoの拠出拡大、住宅ローンの繰上返済など“出口戦略”も前倒しで設計しよう。インフレは現役期間のキャッシュと老後の購買力を同時に削るため、早めの複線化と資金シフトが欠かせない。年齢を重ねたからこそ持てる知見と信用をフル活用し、「守り」と「攻め」を同時に動かす二刀流マインドで臨みたい。

7. まとめ – インフレ時代に必要なマインドセット

最後に、本記事の要点をまとめましょう。

まず何より伝えたいのは、「デフレマインドからインフレマインドへの転換」の重要性です。長く染み付いた思い込みを更新するのは簡単ではありませんが、現実に合わせて私たちの金銭感覚や行動様式も変えていかねばなりません。インフレ時代では、お金は使わないと価値が減るし、適切に投資しないと資産は守れないという事実を受け入れる必要があります。「安いほど良い」「貯金さえしておけば安心」というデフレ時代の常識は、一度捨ててかかりましょう。それよりも、「お金は上手に活用してこそ価値が生まれる」「支出にも投資にもメリハリをつける」という新しい発想を身につけたいところです。

具体的な戦略として、本記事ではインフレ時代の五箇条を提案しました。

  1. 賢く資産運用 – 現金だけでなく株式・投資信託・外貨・実物資産などに分散投資し、インフレに負けないリターンを目指す。【現金はインフレで目減りすることを肝に銘じて!】
  2. 徹底した節約とメリハリ消費 – 家計のムダを省きつつ、心の潤いも確保する消費バランスを追求する。【節約=我慢ではなく、ゲーム感覚で創意工夫を楽しもう!】
  3. 収入アップへの行動 – 若手はスキルアップ&キャリアアップ、ミドルは副業や交渉で収入源を増やす。【インフレを言い訳にせず、自らチャンスをつかみにいく姿勢が大切!】
  4. インフレに強い分野を味方に – 働くにせよ投資するにせよ、価格転嫁力のある業種やビジネスモデルを意識する。【必要とされるもの・付加価値の高いものを扱う人や企業になろう!】
  5. 世代に応じた柔軟な適応 – 若い世代は将来のため攻め、40代以上は経験を武器に守りと攻めの二刀流で挑む。【年齢に関係なく、「今できること」にフォーカスする前向きさを!】

これらを実行する上で、一番のカギとなるのは結局のところマインドセット(意識改革)です。インフレは怖いもの、不安なものと思いがちですが、視点を変えれば「行動する人にとってはチャンス」でもあります。実際、このインフレ局面で長年の停滞から抜け出し、新しい挑戦を始めた人も大勢います。消費者の意識も企業の姿勢も変わりました。私たち自身も、環境の変化に合わせて柔軟に変わっていきましょう。

最後に、こんな例え話で締めくくりたいと思います。デフレ時代の日本は、ずっと穏やかなプールに浸かっているようなものでした。水は冷たく、動かなければじっとしていられた。でもインフレという波が来て、水面が揺れています。波にもまれて立っているのが辛いなら、自ら泳ぎ出すしかありません。最初は大変でも、泳ぎ方を覚えれば波に乗って前に進めます。動かずに飲み込まれるか、動いて活路を開くか。選ぶのは私たち自身です。

インフレ時代を生き抜く知恵と知識は、実践してこそ意味があります。今日の内容の中から、ぜひ「これはやってみよう」と思うことを一つでも見つけてください。デフレマインドに別れを告げ、インフレ時代を力強く泳ぎ切りましょう。私たちの未来は、自分たちの手で切り拓くことができるのです。