2025年7月の参議院選挙が終わり、8月1日に臨時国会が開催されます。なぜこのタイミングで国会が開かれるのか?それは新たに選ばれた議員が正式に登院し、参議院の体制を再構築するためです。本記事では、臨時国会の役割や開催理由を、憲法や制度に基づき、政治に詳しくない方にもわかるよう丁寧に解説します。選挙の次に何が起こるのか、今後の政局の動きにも関わる重要なポイントをやさしく解き明かします。
「選挙が終わったばかりなのに、もう国会?」「また政治家たちが集まって何をするの?」そんな疑問を感じた方は多いのではないでしょうか。とくに政治にあまり詳しくない人にとっては、参議院選挙のすぐ後に「臨時国会」が開かれることに、なんとなく違和感を覚えるかもしれません。しかし実はこれは、ただの形式や政治家の都合ではなく、日本国憲法や国会法に基づいてしっかりと決められている、国としての大事なルールに従っているのです。
臨時国会は、選挙で新たに選ばれた議員たちが正式に登院し、議長を選び、委員会を再構成し、新体制を整えるために欠かせない“はじまりの場”です。今回は、そんな臨時国会の役割と意味を、政治初心者にもわかりやすく、できるだけ難しい言葉を使わずに解説していきます。「なぜ今、国会が必要なのか?」その理由がきっと腑に落ちるはずです。

【目次】
- 臨時国会とは何か?
- なぜ参院選の後に臨時国会があるのか?
- 具体的に何をする国会なのか?
- 臨時国会と通常国会の違い
- 参院選後の臨時国会で注目すべきポイント
- 過去の臨時国会で起きた重要な動き
- まとめ
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1. 臨時国会とは何か?

臨時国会とは、通常のスケジュールによる国会(たとえば1月に始まる「通常国会」)とは別に、特別な理由があるときに開かれる国会のことです。日本国憲法第53条には、臨時国会について次のように定められています。
「内閣は、国会の臨時会の召集を決定することができる。」
「また、いずれかの議院の総議員の4分の1以上の要求があれば、内閣はその召集を決定しなければならない。」
つまり、臨時国会は内閣が「必要」と判断した場合に開くことができますが、議会側からの要求が一定数(全議員の4分の1)に達した場合には、内閣には「開かなければならない」という義務が生じます。これが「できる」と「しなければならない」の違いです。
たとえば、自然災害の対応、緊急的な予算措置、あるいは国際的な問題への対応など、時期に関係なく審議や決定が必要な事案が発生した場合に、臨時国会が開かれることがあります。また、衆議院や参議院での選挙後にも、新しい議員が登院して議長を選出するなどの手続きのために臨時国会が開かれます。これは「儀式的」な意味合いもありますが、議会の新体制を整えるために不可欠なステップです。
政治の大きな節目や政局の変化の際には、臨時国会が開かれて重要な政策や法案が審議されるケースも多く、形式的なものに見えて実は中身のある国会になることもあります。つまり臨時国会とは、ただの“臨時対応”ではなく、時に国の方向性を左右するような意思決定の場になることもあるのです。
2. なぜ参院選の後に臨時国会があるのか?

参院選の後に臨時国会が開かれる理由は、端的にいえば「新しく選ばれた参議院議員たちが、正式に国会での職務をスタートするため」です。選挙で信任を得た議員たちは、ただ当選しただけではまだ「国会議員としての仕事」を始めることはできません。まずは国会という公式な場に登院し、諸手続きを経て初めて、国政に関与する立場となるのです。
この初登院の場が、臨時国会です。ここでは、議員が議席に着くだけではなく、新しい参議院を機能させるための重要な手続きが行われます。具体的には、まず議長と副議長の選出が行われます。議長は、いわば参議院の「会議の司会者」であり、議会の円滑な運営を担う重要なポジションです。次に、各種の常任委員会や特別委員会の構成を決める作業があります。これによって、法案の審議や政策議論が進められる体制が整います。
こうした一連の手続きは、「国会という組織の立ち上げ作業」にあたります。特に参議院の場合、3年ごとに半数が改選されるため、そのたびに臨時国会で体制の更新が必要になるのです。まさにこれは「新しい体制で国会を再スタートさせる儀式的な場」であり、同時に、政治の現場が再び動き出す始まりの瞬間でもあります。
参院選後の臨時国会は、形式的なものに見えがちですが、実は非常に制度的・実務的に重要な意味を持つのです。国会が空白期間なく機能するために、このプロセスは欠かせません。
3. 具体的に何をする国会なのか?

参院選後に開かれる臨時国会では、「新しい参議院の船出」とも言える重要な手続きがいくつも行われます。まず最初に、新しく当選した参議院議員たちが初登院します。これは、任期の公式なスタートを意味し、彼らが本格的に国会議員としての職務を始める第一歩です。初登院では、議員としての宣誓や所信表明が行われることもあり、まさに“政治家としての新たな一歩”を踏み出す象徴的な場でもあります。
続いて行われるのが、参議院議長・副議長の選出です。議長は参議院の顔とも言える存在で、国会内の議事運営を司り、中立的な立場で発言の順番や会議の流れを管理する役割を担います。この人選は、与野党のバランスやその時の政治情勢を反映して決まるため、どの政党が影響力を強めたかを読み取るうえでも注目ポイントとなります。
さらに、各常任委員会や特別委員会の構成決定も重要な議題です。これは、法案審議や政策の具体的な議論を進めるための「作業チーム」を編成する作業にあたります。例えば、財政、外交、厚生労働、教育など、各テーマごとに委員会が組まれ、ここでの議論が本会議に上がる前段階の審議の場となります。
また、選挙の結果に応じて、各党の議席数に基づいた配分の見直しが行われます。これによって、与党と野党の力関係が変化した場合には、それがそのまま委員会や審議の主導権にも影響します。場合によっては、政局の流れが一変するような再編や連立交渉のきっかけにもなるのです。
さらに、必要に応じてこの臨時国会で首相指名選挙が行われることもあります(特に内閣総辞職などのケース)。また、政権が緊急に通したい法案や、選挙公約の早期実現を目指す重要法案などがここで提出され、審議される可能性もあります。
このように、臨時国会は形式的な儀式だけでなく、実質的な国会運営や政局の基盤を築く場であり、新しい議員にとってはまさに「初仕事」の舞台、国会全体にとっては「再始動の合図」といえる重要な意味を持っています。
4. 臨時国会と通常国会の違い

臨時国会と通常国会の違いは、「開かれるタイミング」と「目的・内容」に大きな違いがあります。国会には4つの種類があり、それぞれの役割が憲法と国会法で明確に定められています。以下にそれぞれの国会の特徴を詳しく見てみましょう。
■ 各国会の違いと役割
| 種類 | 開催時期 | 主な目的・内容 |
|---|---|---|
| 通常国会(常会) | 原則として毎年1月中に召集され、会期は150日間 | 国の予算案の審議が中心。内閣提出の重要法案もこの国会で審議される。年間で最も長く、最も多くの法律が扱われる「メイン国会」。 |
| 臨時国会 | 必要に応じて随時開催(年に複数回開かれることもある) | 自然災害や外交問題、政権交代など突発的または重要な政治課題に対応。選挙後の体制整備(議長・副議長の選出、委員会構成)などにも使われる。 |
| 特別国会 | 衆議院の解散・総選挙の後に必ず開催 | 新しい衆議院の初登院と同時に、首相指名選挙が必ず行われるのが特徴。内閣の顔ぶれが変わる節目の国会。 |
| 緊急集会 | 参議院のみで開かれる特例的な国会(衆議院が解散中など) | 臨時的に重要な国の決定を下す必要があるとき、参議院だけで国会機能を果たす。非常にまれにしか行われない。 |
今回(2025年8月1日)の臨時国会は、「参議院選挙後」に開かれるものであり、目的は新たに選出された参議院議員が正式に国政の場に参加し、参議院を再構成するためです。新しい体制のスタートに伴って、
- 議長・副議長の選出
- 各種委員会の再構成
- 与野党の勢力図に基づいた議席配分の見直し
といった「国会をもう一度組み直す作業」が中心になります。
このように、臨時国会は「通常国会では間に合わない」「政治の空白をつくらない」ための仕組みとして機能しており、とくに選挙後には政権運営の安定と国会機能の継続性を保つ上で不可欠なプロセスなのです。
また、選挙結果によって政党間の力関係が大きく変わった場合には、ここでの議長人事や委員会配分をめぐって与野党の駆け引きや交渉が活発化し、政局の転換点となることも少なくありません。
つまり、今回の8月1日の臨時国会は、「新しい参議院が始動するための公式スタート地点」であり、国会全体が次の通常国会に向けて動き出すための土台づくりの場となるのです。制度的には形式的に見えても、政治のリアルな現場では、ここでの動きが今後の政策や政局に大きく影響することもあるため、実質的にも非常に重要な国会といえるでしょう。
5. 参院選後の臨時国会で注目すべきポイント

参院選後に開かれる臨時国会では、形式的な手続きが中心になると思われがちですが、実は今後の政局や政策運営の行方を占ううえで重要な“見どころ”が多数あります。とくに注目すべきポイントは、「与野党の力関係の変化」「議長人事」「新人議員の動向」の3点です。
まず一つ目は、与党と野党の勢力バランスの変化です。選挙の結果、与党が議席を伸ばしたのか、それとも野党が巻き返したのかによって、今後の法案審議の流れが大きく変わる可能性があります。参議院は衆議院とは異なり解散がないため、選挙のたびにじわじわと勢力図が塗り替えられていく特性があり、それが政権の安定度や政策推進力に影響を与えます。
二つ目の注目点は、議長・副議長の人事です。議長は参議院の運営を取り仕切る「舵取り役」であり、中立的な立場が求められる一方で、実際には政党間の駆け引きや妥協によって選ばれます。どの政党から議長が出るか、あるいはその人がどのような政治姿勢を持っているかによって、国会全体の空気感や議事進行のスタンスが変わってくるため、非常に注目されるポイントです。
そして三つ目は、新たに選ばれた議員たちの初登院とその動向です。特に今回の選挙で注目を集めた候補者や、有名人、元官僚、若手政治家などがどのような発言をするのか、どの委員会に所属するのか、といった点はメディアでも大きく報じられます。国民にとっては、「自分が投票した人がどのようなスタートを切るのか」を確認する場でもあり、国会が“顔の見える存在”になる瞬間でもあります。
また、こうした新人議員の登壇や質問は、その人の政策への理解度や発信力を測る材料にもなり、将来的なリーダー候補を見極める上でも重要です。まれにこの初登院でのスピーチがSNSなどで話題になり、一気に知名度を高めるケースもあります。
このように、参院選後の臨時国会は単なる手続き的な場ではなく、今後の政治の流れを占う“舞台裏”のような国会とも言えます。注目すべき場面を見逃さないことで、政治がより身近なものとして感じられるきっかけになるかもしれません。
6. 過去の臨時国会で起きた重要な動き

臨時国会は「通常国会では対処しきれない重要課題」や「政治体制の転換点」で開かれることが多いため、過去にも日本の政治の流れを大きく動かすような出来事がいくつも起きています。ここでは、代表的な過去の臨時国会の例を振り返りながら、その“臨時”の裏に隠された“本質”を見ていきましょう。
■ 2017年:臨時国会冒頭での衆議院解散 → 総選挙に突入
この年の臨時国会は、安倍晋三首相(当時)が、国会の冒頭でいきなり衆議院を解散するという極めて異例の展開となりました。これを「冒頭解散」と呼び、当初の臨時国会の目的であった所信表明演説や法案審議がすべて吹き飛び、直ちに総選挙に突入するという緊急事態となったのです。
この背景には、森友・加計学園問題による政権への批判が強まる中、野党の準備が整っていないタイミングを狙って先手を打つという政略的な判断があったとされます。結果的に自民党は選挙で大勝し、安倍政権の長期化につながる重要な局面となりました。
■ 2021年:岸田文雄首相が臨時国会で初の所信表明演説
2021年の臨時国会は、岸田文雄首相が新たに就任した直後に開かれたもので、ここで彼の「政治の原点」や「新しい資本主義」「分配と成長の好循環」などを掲げた初の所信表明演説が行われました。
この演説は、岸田内閣の政策方針を国民に示す最初の公式な場となり、その語り口や内容がメディアや有識者から広く分析されました。臨時国会とはいえ、新政権の船出としての“看板”を掲げる意味合いが強く、今後の政策に対する評価や期待感を形成するきっかけとなったのです。
■ 2023年:物価高対策のための補正予算審議
2023年の臨時国会では、コロナ禍からの回復と急激な物価上昇を背景に、政府が緊急的に打ち出した物価高対策の補正予算が審議されました。電気・ガス代の支援策や低所得世帯への給付金、一時的な減税措置などが盛り込まれ、生活者の不安を和らげるための短期的な政策対応が議論されました。
特に注目されたのは、これらの予算がどの程度即効性を持つのか、また中長期的に財政にどんな影響を与えるのかという点で、与野党の間で活発な議論が交わされたことです。こうした補正予算の審議は、「臨時」という言葉からは想像しづらいほど中身の濃い、実質的な政策決定の場となっています。
このように、臨時国会は決して「一時しのぎの会期」ではありません。むしろ、政権が重大な決断を下すための舞台となったり、新しい時代の政策ビジョンを提示する場になったりと、国の方向性を大きく左右する分岐点になってきた歴史があるのです。
そのため、今回の参院選後の臨時国会でも、単に議長を選出するだけでなく、政府がどんな姿勢で今後の政治に臨むのか、あるいは野党がどのような戦略をとるのかといった点にも、注目が集まります。臨時国会は、静かに始まりつつも、大きな転換点になる可能性を常に秘めた国会だということを覚えておくと、ニュースの見方もぐっと深まるはずです。
7. まとめ

2025年8月1日に開かれる臨時国会は、7月の参議院選挙で新たに選ばれた議員たちにとっての「初仕事の場」であり、国会全体としては新しい体制を整え、再スタートを切るための重要な節目となります。多くの人にとっては、「国会=難しい」「臨時=形式的」といったイメージがあるかもしれませんが、実はこの臨時国会には、制度的にも政治的にも大きな意味が込められています。
まず、臨時国会では新しい議員が正式に登院し、議員としての職務をスタートします。これは単なる儀式ではなく、議長・副議長の選出や各種委員会の構成、議席配分の調整といった、国会が機能するための基本設計を組み直す大切な作業でもあります。とくに今回の選挙で与野党の勢力バランスに変化があった場合、その影響は議会運営や法案の審議体制に直結します。つまり、今後の国政の進み方に大きく関わる判断が、この臨時国会の場で静かに行われるのです。
さらに、注目すべきは新人議員の登場です。メディアで話題になった候補者や、これからの政治を担う可能性のある若手・無所属議員などが、国会の場でどんな発言をし、どんな立ち位置を取るのかは、国民にとっても「政治を身近に感じる」絶好のタイミングです。「この人、テレビでは見たけど、実際どんなことを話すんだろう?」と関心を持って見ることで、政治が一気に“自分ごと”になっていくきっかけになるかもしれません。
臨時国会は、名前の通り「臨時」ではありますが、それはあくまで通常スケジュール以外で開かれるというだけの話であって、その中身が軽いという意味では決してありません。むしろ、過去には政局を大きく動かす場になった例も多く、今回の国会でも、岸田政権の今後の立ち位置や野党の戦略などがじわじわと表に出てくることが予想されます。
選挙というイベントで政治に少しでも関心を持った方にこそ、こうした国会の動きに目を向けてほしいタイミングです。臨時国会のニュースを「自分には関係ない」と流してしまうのではなく、「この国は今、どういう方向に進もうとしているのか?」という視点で見てみると、ニュース番組や記事の読み方が大きく変わるはずです。
政治は、知識ではなく関心から始まります。この夏、臨時国会をきっかけに、ぜひその一歩を踏み出してみてください。ニュースの向こう側に、自分の暮らしと未来が見えてくるはずです。
【参考資料】
■ 憲法・法制度に関する一次情報
- 日本国憲法 第53条(臨時会の召集)
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=321CONSTITUTION - 国会法(第1章 総則、第2章 国会の種類と召集)
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=322AC0000000001
■ 国会の公式情報
- 衆議院公式サイト「国会の種類と会期」
https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_annai.nsf/html/statics/guide/kokkai.htm - 参議院公式サイト「臨時会とは」
https://www.sangiin.go.jp/japanese/aramashi/chousa/aramashi04.html - 衆議院・参議院「議長・副議長の役割」
https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_annai.nsf/html/statics/guide/speaker.htm
https://www.sangiin.go.jp/japanese/aramashi/speaker/index.html
■ 過去の臨時国会に関する報道・解説
- NHK政治マガジン「臨時国会ってどんな国会?」
https://www.nhk.or.jp/politics/articles/feature/22094.html - 日本経済新聞「臨時国会とは?過去の開催例と注目点」
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO63738440Q0A930C2EA2000/
■ 過去の事例
- 首相官邸「歴代内閣の組閣・解散・臨時国会の日程」
https://www.kantei.go.jp/jp/rekidainaikaku/