相場には「波」があると言われる。上昇と調整、そして再び上昇へと循環を繰り返しながら、中長期のトレンドが形成されていく。その波は偶然に見えることもあるが、よく観察すると、価格の上下には一定の規則性がある。特に、テクニカル分析の中で軸になる移動平均線、トレンド転換を捉えるMACD、そして価格変動率に基づく下落率・上昇率の分析は、FANG+のような成長テーマ指数では非常に機能する。
今回は、2025年11月13日時点のFANG+チャートをもとに、今年の相場動向と直近の調整を踏まえて、次に意識すべき安値と高値を丁寧に読み解いていく。本記事では、単に価格を予測するのではなく、なぜその価格帯が重要なのか、どういった背景で押し目が形成されるのかを、チャートの波と統計的な動きを読み解きながら説明する。

FANG+はナスダックとは別の動きをすることも多く、構成銘柄のボラティリティや成長テーマによって、上昇幅・下落幅が他指数よりも大きく表れる特徴がある。今年のFANG+の下落率と上昇率を見るだけでも、相場のトレンドがいかに力強く、そして反転のタイミングが分かりやすかったかが見えるはずだ。
本記事は、移動平均線とMACDを中心に値動きを捉え、フィボナッチの押し目と拡張ラインで価格の層を判定し、下落率と上昇率の実績から今後の値幅を読み解く。読めば、FANG+の現在地と次のシナリオが自然と理解できるはずだ。
【注意】
本記事は、FANG+指数のチャート分析をもとに、移動平均線やMACD、価格変動率を踏まえて相場の特徴を解説するものです。特定の銘柄や投資商品を推奨する目的ではなく、あくまで相場理解の一助として情報をまとめています。投資判断は、ご自身の投資方針・資金状況・リスク許容度に応じて慎重に行ってください。最終的な判断と結果については、読者ご自身の自己責任となります。

【目次】
- 今年のFANG+相場の全体像
- 50日移動平均線が示す現在地
- MACDから読み解くモメンタムの変化
- 下落率・上昇率から見る押し目の深さ
- フィボナッチで整理する押し目候補
- 相場サイクルと押し目確率
- 次の高値メドと上昇シナリオ
- 反転サインの見極めとトレードの考え方
- 市場環境と10000pの意味
- まとめ
1. 今年のFANG+の全体像
2025年のFANG+を振り返ると、最も象徴的だったのは2月下旬から4月上旬にかけての急落である。この下落は−29.2%という強烈な落ち込みで、原因として最も大きかったのはトランプ政権下での関税政策強化、いわゆる関税ショックへの懸念だった。米国の企業収益に対する不確実性、米中関係の緊張、半導体セクターへの間接的な影響など、複数の要因が重なり、わずか数十日で4,000p以上の下落を招いた。

この下落の着地点が9,933pで、実質的には10,000pが明確な節目として機能した。これは偶然ではなく、2024年4月と8月に形成されたサポート帯と完全に重なる。つまり、市場は10,000p前後に強い需要があることを認識していたということだ。それが今年の底打ちにもつながった。

そして4月に底をつけてからの反発は強烈だった。FANG+が最も得意とする「テーマ相場」が再点火し、AI、クラウド、広告テック、プラットフォーム銘柄が軒並み買われ、5月以降は持続的な上昇となった。最終的に10,000pから17,035pまで約70.4%の上昇を記録している。

この70%上昇は、2020〜2024年にも何度か見られた典型的なFANG+の波に近い。過去を見ると、FANG+は大幅下落の後に40〜70%の反発を繰り返しており、今年の上昇も統計的に「いつものFANG+のリズム」と言える動きだった。
ただ、ここで重要なのは「17,000pは今年の天井になった」という事実だ。今年の波は一旦ここで終了し、次は調整のフェーズに入っている。この認識が押し目を判断するうえで重要なベースとなる。
2. 移動平均線が示す現在地
次に50日移動平均線を見ていく。FANG+では、50日線が短期から中期にかけてのトレンドを判断する非常に有効な指標だ。今年のチャートでも、50日線は上昇局面において常にローソク足の下に位置しており、上昇トレンドを明確に支えていた。
現在の価格は16,344pで、50日線は16,332p付近。すでに50日線に接触しており、わずかに下回る場面も出始めている。この状態は「トレンドの初期調整」に分類される。50日線を下方向に割り込んでもすぐにトレンドが崩れるわけではないが、今年の波が一度完結したあとであることから、次の押し目を探しにいく動きが続く可能性が高い。

過去3年のデータを見ると、FANG+が50日線を割り込んだあとは平均で6〜12%ほどの調整を伴い、最終的にフィボナッチ38.2%や50%押しを確かめる展開が多い。この法則に従うなら、今回も14,600p〜13,500p付近が次のターゲットになりやすい。

ここで重要なのは、50日線が完全に下向きに転じた場合である。50日線が下降に傾くと、調整の深さが強まりやすく、押し目もより深い位置まで延びる。現在はまだ横ばいに近い形のため、相場全体のトレンドは強いまま残っている。下落しても階段を一段降りる程度で済む可能性が高い。
3. MACDから読み解くモメンタムの変化
MACDはモメンタム変化を測るには非常に有効な指標で、特にFANG+のようにトレンドが大きく出る指数とは相性が良い。
現在のMACDを見ると
・MACD線がシグナル線を下抜け
・ヒストグラムが弱含み
・ゼロラインに向けて下降中
という形で、明確に下降モメンタムへ移行している。

過去を振り返ると、2024年8月や2025年3月の急落局面でも、MACDが同じような形を形成したあと、ゼロラインを割り込み、マイナス圏で2〜3か月滞在した。今回のMACDも、形状が過去の調整局面と非常によく似ているため、今は「調整初期のサインが出た段階」と判断できる。

つまり、移動平均線はまだ上向きトレンドを保ちながらも、MACDは下方向を示しており、相場の内部ではすでに調整ムードが進み始めている。この「移動平均線は強い、MACDは弱い」というギャップは、典型的な押し目形成の前兆である。
4. 下落率と上昇率から導く押し目の深さ
次に下落率と上昇率を分析していく。
2024〜2025年のFANG+の動きをまとめると
・上昇率は平均で20〜43%
・大波では60〜70%上昇
・下落率は−21〜−29%に集中
という規則的な波になっている。

今回の上昇は
10,000p → 17,000p
上昇率 70.4%
と、明らかに「大波」に分類される動きだった。大波が終わったあとは、必ずといっていいほど調整が入る。下落率で見ると、今年の下落幅はすでに−3.9%と軽微で、まだ「調整の序盤に過ぎない」ことが読み取れる。

統計的に見ると
17,000p × 0.75(25%下落)= 12,750p
この数字が「自然な下落幅」として導き出される。
ただし、これは最大幅。通常なら
・17,000 → 14,580(38.2%押し=−14.2%)
・17,000 → 13,500(50%押し=−20.5%)
・17,000 → 12,900(61.8%押し=−24.1%)
これら三つの階層で押し目が止まる。
5. フィボナッチで押し目を整理する
今回の分析の中心となるのがフィボナッチ押しである。
10,000 → 17,000 の大波を基準に押し目を引くと以下の通りになる。

23.6%押し 16,300p(現在の攻防点)
38.2%押し 14,680p
50.0%押し 13,500p
61.8%押し 12,900p(黄金比)
この中で市場が最も反応しやすいのが38.2%と50%である。
理由は二つ。
ひとつは市場参加者の多くが意識するラインであること、もうひとつは過去のFANG+の押し目もこの辺りが中心だったからである。
結論として、次の押し目候補は以下の三つに絞られる。
第一候補 14,600p前後
第二候補 13,500p前後
最終候補 12,900p前後
この三階層で押し目が完成する可能性が高い。
ここで誤解してはいけない点がある。
「12,900pは最終候補であって、必ず到達するとは限らない」
ということだ。
むしろ、反発が強い場合は14,600p手前で切り返すシナリオも十分あり得る。
6. 相場の波とサイクルから見る押し目の確率
次に、サイクル面から押し目の確率を検証する。
FANG+の大波は
下落 → 反発 → 大反発
という三段構成になっている。

今年も例外ではなく
下落(2月〜4月)
反発(4月〜5月)
大反発(5月〜9月)
というきれいな三段階相場を形成した。
この構造の後には、必ず一段階深い押しが来る。そのため、14,000台前半までの調整は自然な流れに思える。

14,600pという価格は
・フィボ38.2%
・価格帯別出来高の厚いゾーン
・移動平均線の下の層
これら三つが重なる。
次に13,500pは
・フィボ50%
・心理的節目
・今年の上昇幅の半値
という強い意味を持つ。押し目として最も安定した位置にある。
最後の12,900pは
・61.8%押し
・大きな下落率との整合性
がある一方、
・今年の波動の強さからすると深押しになりやすい
という特徴もある。
つまり、到達確率としては
14,600p > 13,500p > 12,900p
の順で高い。
7. 次の高値はどこになるのか
押し目が終わったあとは、当然次の上昇フェーズが訪れる。
今回の上昇幅は7,035pだった。
この値幅をそのまま次の上昇に当てはめるとするなら、以下のような価格が見えてくる。

押し目が14,600pで決まった場合
14,600p + 7,000p = 21,600p前後
押し目が13,500pで決まった場合
13,500p + 7,000p = 20,500p前後
押し目が12,900pだった場合
12,900p + 7,000p = 19,900p前後
つまり、次の高値のターゲットは
19,900〜21,600pあたりに集中している。

さらにフィボナッチ拡張で計算すると
1.272倍拡張 19,400p前後
1.618倍拡張 21,500p前後
これらは非常に現実的な到達点になる。
結論として
次の高値候補は19,400p〜21,500p
その中でも21,000p前後が特に強い候補となる。
8. 相場が反転する瞬間をどう見極めるか
押し目がどこで決まるかを見極めるには、以下の二つが重要である。
ひとつはMACDのゼロライン越え
もうひとつは50日線の上抜け
MACDが再びゼロラインを越える形になれば、モメンタムが上昇方向に転換し、そこが押し目完成のサインとなる。

50日線は、反発局面で最も信頼性の高い指標である。
ローソク足が50日線を強く上抜け、そのまま上で定着する形になれば、次の上昇波が始まる。
特に今年のような強い上昇の後であれば、MACDと移動平均線の組み合わせが押し目の判断には最適。
9. 市場環境とファンダメンタルズ
次に外部環境について触れておく。
今年の調整の原因が関税ショックであったように、FANG+はファンダメンタルズの影響も強く受ける。
ただし、2020年以降のポイントとして重要なのは
前年安値を割り込むような深い下落はショック時以外は起こっていない
という点だ。

つまり、10,000p割れは、よほどのショックがない限り考えにくい。
これを踏まえると
・押し目は12,900pが下限
・10,000p割れは「例外事象」扱い
という整理が最も現実的となる。
10. まとめ
FANG+の今年の相場を振り返りつつ、移動平均線、MACD、フィボナッチ、下落率・上昇率を総合して分析すると、現在の相場は「次の押し目を探している最中」であることが明確に読み取れる。
結論として次の押し目は
第一候補 14,600p前後
第二候補 13,500p前後
最終候補 12,900p前後
次の高値は
19,400〜21,500p
特に21,000p前後が中心値。
この価格帯は単なる予測ではなく、
・波動
・統計
・テクニカル
これら三つが重なる場所に位置している。
相場は必ずしも分析通りに動くわけではないが、どの指標をどう見ればいいのか、どのタイミングで判断すべきなのかが明確に整理されていれば、迷いが減り、自分の投資ルールを守りやすくなる。今回の記事は、そのための一つの基準になるはずだ。
【注意】
以上の内容は、FANG+指数のチャート構造と過去の値動きをもとに整理した分析です。特定の銘柄や投資方法を推奨するものではありません。市場環境は常に変化するため、実際の投資判断にあたっては最新のデータやご自身のリスク許容度を踏まえて適切に判断してください。投資はすべて自己責任であり、本記事の活用によって生じたいかなる損失についても責任は負いかねます。