「NISAとiDeCoはどちらがいいのか」「毎月の積立は、どちらを優先すべきか」と迷っていませんか。どちらも資産形成に役立つ制度ですが、税制優遇の仕組みやお金を使える時期、受取時の税金には違いがあります。

NISAは必要に応じて売却できる一方、iDeCoは原則60歳まで引き出せない代わりに、掛金の所得控除を受けられます。ただし、所得控除の効果は収入などによって異なり、受取時まで必ず無税になるわけではありません。

2027年に向けたiDeCoの拠出枠拡大を機に、積立額やNISAとの配分を見直したい方もいるでしょう。枠が増えても、家計に合う金額は人それぞれです。

この記事では、NISAとiDeCoの違いから、同じ掛金での節税効果、退職金と受取時期の関係、年代・働き方別の考え方、予算別の併用例まで解説します。税金・使う時期・受取額を整理し、現在の暮らしと老後への備えを両立する方法を考えていきましょう。

束ねられた日本円の札、10,000円札が見える

【アフィリエイト広告を利用しています】

1.NISAとiDeCoはどちらがいい?まず結論

途中で使う可能性がある長期運用資金にはNISA、老後まで使わない資金で所得控除を活用できるならiDeCoが有力な選択肢です。 ただし、どちらを優先するかは、収入や家計、退職金の有無によって変わります。

NISAは必要に応じて商品を売却し、資金を引き出せることが強みです。一方、iDeCoは掛金の全額が所得控除の対象となり、所得税・住民税の負担を軽減できることに特徴があります。「節税できる金額」だけでなく、「いつ使うお金なのか」「受け取るときに税金がかかるのか」まで含めて考えることが大切です。

まずは、ご自身の状況に近いものを確認してみてください。

お金の使い方・家計の状況優先して検討したい選択肢判断のポイント
将来、老後以外にも使う可能性があるNISA売却して出金でき、使い道の変更に対応しやすい
老後まで使わない資金があり、所得控除を活用できるiDeCo掛金による節税効果と受取時の税負担を比較する
課税所得がない、または少ないNISAを中心に検討iDeCoの所得控除によるメリットがない、または小さい
老後資金と、途中で使える資金の両方を育てたいNISAとiDeCoを併用お金を使う目的と時期に合わせて配分する
生活費や急な出費に備える現金が足りないまず預金などを確保投資を始める・増額する前に家計の余裕を作る

1-1.途中で使う可能性がある長期運用資金はNISAを検討

NISAは、老後資金だけでなく、将来の住宅費や教育費、働き方を変えるための資金など、幅広い目的に使いやすい制度です。iDeCoのように原則60歳まで引き出せない制限がなく、必要に応じて保有商品を売却できます。

例えば、当初は老後のために積み立てていても、途中で住宅の修繕費が必要になったり、独立のために資金を用意したくなったりすることがあります。将来の使い道を決めきれないお金についても、選択肢を残せることがNISAの利点です。

ただし、売却できるからといって、必要なときに必ず利益が出ているとは限りません。来年の旅行費用や数年以内に支払う予定のお金などは、預金などで確保し、そのうえで長く運用できる資金をNISAに回す考え方が適しています。

NISA・つみたてNISAなら ひふみ投信

1-2.老後専用資金で所得控除を活用できるならiDeCoを検討

iDeCoは、老後のために使い道を決めたお金を積み立てる場合に、有力な制度です。支払った掛金の全額を課税対象の所得から差し引けるため、所得税・住民税を負担している人は、税負担を軽減しながら老後資金を準備できます。

同じ掛金でも、適用される所得税率が高いほど、所得控除による軽減額は大きくなります。一方、課税所得がない人には、この所得控除による節税効果はありません。「iDeCoに加入すれば、誰でも同じようにお得になる」というわけではないのです。

また、資産は原則60歳まで引き出せず、加入期間などによっては受取開始がさらに後になります。受取時も、会社の退職金や公的年金との組み合わせによって税負担が変わるため、積立時の節税だけで判断しないことが大切です。

1-3.両方を使う場合も、配分は家計によって変わる

NISAとiDeCoは併用できます。老後まで使わない資金をiDeCoに、途中で使う可能性がある長期運用資金をNISAに振り分ければ、それぞれの特徴を生かせます。

ただし、「半分ずつがよい」「iDeCoを上限まで使ってからNISAを始める」といった配分が、すべての人に当てはまるわけではありません。毎月の投資予算が同じでも、住宅ローンや教育費、収入の安定性、手元の預金額によって、無理なく続けられる金額は変わります。

例えば、大きな支出を予定している家庭では、預金を確保したうえでNISAを中心にする考え方があります。一方、生活に必要な現金が十分にあり、老後資金を積み増したい人は、受取時の税金も確認しながらiDeCoの配分を増やす方法を検討できます。

まずは生活に必要な現金を確保し、残った資金を「老後まで使わないお金」と「途中で使う可能性があるお金」に分ける。 そのうえで、所得控除の効果や勤務先の企業年金を確認すると、自分に合う配分を考えやすくなります。

2.NISAとiDeCoの違いを比較表で確認

NISAとiDeCoは、どちらも税制優遇を受けながら資産形成ができる制度ですが、目的や仕組みは異なります。NISAは投資で得た利益が非課税になる制度で、iDeCoは掛金の所得控除などを受けながら、自分で老後資金を積み立てる年金制度です。

比較するときは、「どちらが節税になるか」だけでなく、お金を積み立てるとき、運用している間、受け取るときに分けて確認すると分かりやすくなります。また、引き出せる時期や投資できる上限、選べる商品にも違いがあります。まずはそれぞれの基本を押さえたうえで、比較表で全体像を整理しましょう。

2-1.NISAは投資の利益に対する非課税制度

NISAは、対象となる株式や投資信託などに投資した際の売却益や配当・分配金が、原則として非課税になる制度です。

例えば、NISAで100万円分の投資信託を購入し、130万円で売却した場合、利益の30万円に日本の所得税・住民税はかかりません。ただし、投資した100万円が給与などの所得から控除されるわけではありません。NISAの税制上のメリットは、基本的に「投資で得た利益」に対して適用されます。

成人向けのNISAには、次の2つの投資枠があります。

  • つみたて投資枠:年間120万円。長期・積立・分散投資に適した一定の投資信託が対象。
  • 成長投資枠:年間240万円。対象の上場株式・ETF・投資信託などに投資できる。

両方を併用すれば年間360万円まで投資でき、非課税で保有できる期間は無期限です。非課税保有限度額は購入額ベースで1,800万円、そのうち成長投資枠で利用できるのは1,200万円までです。

商品を売却した場合は、その商品の購入額に相当する非課税保有限度額を翌年以降に再利用できます。ただし、その年の年間投資枠が増えるわけではありません。

なお、国内上場株式の配当を非課税で受け取るには、証券会社を通じて受け取る「株式数比例配分方式」の選択が必要です。外国株式の配当などでは、外国での課税が残る場合もあります。

手数料無料!松井証券のNISA

2-2.iDeCoは税制優遇を受けながら老後資金を作る年金制度

iDeCoは、国民年金や厚生年金に上乗せする老後資金を、自分で積み立てる私的年金制度です。掛金を拠出し、利用する金融機関が用意した投資信託や定期預金などから商品を選んで運用します。

主な税制優遇は、次の3つです。

  • 積み立てるとき: 掛金の全額が所得控除の対象になる。
  • 運用している間: 運用益を非課税で再投資できる。
  • 受け取るとき: 一時金なら退職所得控除、年金なら公的年金等控除の対象になる。

ここで注意したいのは、受取時に控除があることと、受取額が必ず全額非課税になることは違うという点です。受取額や会社の退職金、公的年金との関係によって、税負担が生じる場合があります。

また、老後資金を準備する制度のため、原則60歳までは資産を引き出せません。60歳から受け取るには、確定拠出年金の通算加入者等期間が10年以上必要で、期間が短い場合は受取開始年齢が後になります。

2-3.積立時・運用中・受取時の違いを一覧で比較

NISAとiDeCoの主な違いを、次の表にまとめました。

比較する項目NISAiDeCo
利用目的老後資金を含む、幅広い目的の資産形成公的年金に上乗せする老後資金の準備
掛金の所得控除なし掛金全額が対象。ただし課税所得がなければ所得控除による節税効果はない
運用中の税金対象商品の売却益・配当・分配金が原則非課税運用益を非課税で再投資できる
引き出せる時期商品を売却し、代金の受渡し後に出金できる原則60歳以降。加入期間などによって異なる
受取時の税金出金自体に追加の税金はかからない一時金・年金それぞれの控除を適用し、受取額などに応じて課税
投資・拠出上限年間360万円、非課税保有限度額1,800万円。成長投資枠は内数で1,200万円まで加入区分や勤務先の企業年金によって異なる
選べる商品各投資枠の対象となる投資信託・株式・ETFなど。金融機関によって取扱いは異なる利用する金融機関が用意した投資信託・定期預金・保険商品など
手数料・コスト金融機関や商品によって売買手数料、信託報酬など加入時・口座管理・給付時などの手数料に加え、投資信託の信託報酬など

制度の概要と商品・費用の取扱いは、金融庁、厚生労働省、iDeCo公式サイトの公表内容に基づいています。

iDeCoの拠出上限は、2026年12月分から変更されます。主な加入区分ごとの月額上限は、次のとおりです。

加入区分2026年11月分まで2026年12月分以降
企業年金がない会社員2万3,000円6万2,000円
企業年金がある会社員・公務員最大2万円。ただし企業年金分との合計制限あり6万2,000円から企業年金分を差し引いた額
自営業者などの第1号被保険者6万8,000円7万5,000円
専業主婦・主夫などの第3号被保険者2万3,000円2万3,000円で変更なし

※企業年金がある場合、現在は原則として「5万5,000円-企業型DCの会社掛金-DB等の掛金相当額」と「2万円」の小さい方が上限です。改正後は「6万2,000円-企業型DCの会社掛金-DB等の掛金相当額」で計算します。自営業者などの上限は、国民年金基金の掛金・付加保険料との合算枠です。

2026年12月分の掛金は、通常2027年1月に引き落とされます。「2027年からiDeCoの枠が広がる」と説明されるのは、この引き落とし時期を指しています。詳しい変更点は第4章で取り上げます。

最後に押さえておきたいのは、NISAとiDeCoは金融商品そのものではないということです。同じ投資信託を同じ条件で保有するなら、商品の値動きは基本的に同じですが、税金や制度上の費用、引き出せる時期が異なります。

どちらの制度を使うかに加えて、どの商品に投資するかによって、資産の増え方や値下がりのリスクは変わります。制度の税制優遇と、商品の運用成績を分けて考えることが大切です。

3.節税効果はいくら違う?同じ掛金で比較

NISAとiDeCoの違いを具体的に理解するには、同じ金額を積み立てた場合に、税負担がいくら変わるかを確認すると分かりやすくなります。どちらも運用中の利益に税制優遇がありますが、iDeCoには掛金の所得控除があり、積立時にも税負担を軽減できる点が異なります。

ただし、節税額は全員同じではなく、課税所得や適用される税率によって変わります。また、節税で浮いたお金を生活費に使うか、追加の投資に回すかでも、その後の資産形成は変わります。ここでは、月2万円を拠出できる人が年間24万円を積み立てるケースを例に、金額の違いを見ていきます。

3-1.NISAには掛金の所得控除がない

NISAで月2万円、年間24万円を積み立てても、その24万円を給与などの課税所得から差し引くことはできません。そのため、積み立てたこと自体による所得税・住民税の軽減額は0円です。

ただし、これはNISAに節税効果がないという意味ではありません。NISAでは、対象商品の売却益や配当・分配金が原則として非課税になります。投資によって利益が生じたときに、その利益に対する税負担を抑えられる制度です。

一方、iDeCoの掛金による所得控除は、運用で利益が出たかどうかとは別に適用されます。NISAの利益に対する非課税と、iDeCoの掛金に対する所得控除は、分けて比較する必要があります。

NISA・つみたてNISAなら ひふみ投信

3-2.月2万円を積み立てた場合のiDeCoの節税効果

iDeCoで月2万円を12か月拠出すると、年間掛金は24万円です。この掛金全額が所得控除の対象となります。

掛金全額に同じ税率が適用される場合、税負担の軽減額は、次の式で概算できます。

年間掛金 ×(所得税率+住民税率)=年間の税負担軽減額の目安

住民税の所得割の税率を10%とし、所得税率を5%・10%・20%で比較すると、次のようになります。

所得税率住民税率所得税の軽減額住民税の軽減額年間の軽減額
合計
5%10%1万2,000円2万4,000円3万6,000円
10%10%2万4,000円2万4,000円4万8,000円
20%10%4万8,000円2万4,000円7万2,000円

※本章の試算は、復興特別所得税を除いた概算です。掛金の控除前後で所得税の税率区分をまたがず、住民税所得割にも掛金全額の控除が反映されるものとします。住宅ローン控除などの税額控除によって軽減効果が変わる場合は考慮していません。また、制度手数料や受取時の税金は含めていません。

例えば、所得税率10%・住民税率10%なら、年間24万円の積立によって、税負担が概算で4万8,000円軽くなります。同じ掛金でも、所得税率20%なら軽減額は7万2,000円です。

ここで使う所得税率は、年収そのものに一律でかかる税率ではありません。給与所得控除や所得控除などを差し引いた「課税所得」によって決まります。年収が同じでも、扶養などの条件によって節税額は変わります。

また、「掛金全額が所得控除」という説明は、24万円がそのまま戻ってくるという意味ではありません。税金を計算する対象の所得が24万円減り、それに応じて税負担が軽くなるという仕組みです。

松井証券ではじめるiDeCo

3-3.「掛金が同じ」と「家計の負担が同じ」は違う

所得税率10%・住民税率10%のケースで、NISAとiDeCoにそれぞれ年間24万円を積み立てた場合を考えます。

NISAには掛金の所得控除がないため、積立による家計の負担は年間24万円です。一方、iDeCoは年間24万円を支払っても、税負担が4万8,000円軽くなるため、その効果を差し引いた家計の実質負担は年間19万2,000円になります。

ここでいう実質負担は、税負担の軽減まで含めた比較上の金額です。iDeCoの引き落とし額が月2万円から減るわけではありません。所得税は払込方法に応じて給与計算・年末調整・確定申告などに、住民税は原則として翌年度の税額に反映されます。

さらに、軽くなった税負担分の4万8,000円をNISAへ回すと、次の比較ができます。

積み立て方年間の積立額所得控除による
税負担軽減額
軽減後の家計負担
NISAだけに積み立てる24万円0円24万円
iDeCoだけに積み立てる24万円4万8,000円19万2,000円
iDeCoに24万円+軽減分をNISAへ回す28万8,000円4万8,000円24万円

※税負担の軽減が反映された後まで含めた単純比較です。追加投資の時期や、一時的に必要な手元資金は異なります。計算条件は前項と同じです。

この例では、節税分も投資に回すことで、NISAだけの場合と同じ年間24万円の実質負担で、合計28万8,000円を積み立てられる計算になります。

税率や掛金などの条件が変わらず、この方法を10年間続ければ、追加で投資する元本は48万円です。一方、節税分を旅行や日々の生活に使う場合は、現在の暮らしに使えるお金が増えますが、投資元本は増えません。

再投資したお金の将来価値は、運用結果によって増減します。また、iDeCoの受取時の税金や手数料もあるため、この表だけで最終的な手取りの優劣が決まるわけではありません。比較するときは、同じ掛金で比べているのか、節税後の家計負担をそろえて比べているのかを確認することが大切です。

4.2027年のiDeCo拠出枠拡大で優先順位は変わる?

iDeCoの拠出枠拡大によって、これまでより多くの老後資金を、所得控除を受けながら積み立てられるようになります。特に企業年金がない会社員は、月額上限が2万3,000円から6万2,000円へ増えるため、NISAとの配分を見直すきっかけになるでしょう。

ただし、会社員全員が月6万2,000円を拠出できるわけではありません。勤務先の企業年金によって利用できる枠は異なり、増額すれば途中で使えない資金も増えます。今回の改正は「積み立てられる選択肢が広がる」変更です。自分の上限と家計への影響を確認したうえで、増額するかを判断することが大切です。

4-1.企業年金がない会社員は月2.3万円から月6.2万円へ

企業年金がない会社員の場合、iDeCoの月額上限は2万3,000円から6万2,000円へ、約2.7倍に拡大します。12か月分に換算すると、年間27万6,000円から74万4,000円となり、年間46万8,000円多く積み立てられる計算です。

主な加入区分ごとの変更は、次のとおりです。

加入区分2026年11月分までの
月額上限
2026年12月分以降の
月額上限
企業年金がない会社員2万3,000円6万2,000円
企業年金がある会社員最大2万円※16万2,000円から企業年金分を差し引いた額
国家公務員・地方公務員原則2万円5万4,000円※2
自営業者・フリーランスなどの第1号被保険者6万8,000円※37万5,000円※3
専業主婦・主夫などの第3号被保険者2万3,000円2万3,000円で変更なし

※1 現在は、企業型DCの会社掛金・DB等の掛金相当額と合算して月5万5,000円以内という制限もあるため、iDeCoの上限が2万円未満になる場合があります。
※2 共済掛金相当額が月8,000円の場合。6万2,000円から8,000円を差し引いて計算します。
※3 国民年金基金の掛金・付加保険料との合算枠です。

企業年金がある会社員の改正後の上限は、次の式で計算します。

iDeCoの月額上限=6万2,000円-企業型DCの会社掛金-DB等の掛金相当額

例えば、企業型DCの会社掛金が月2万円、DB等の掛金相当額が月1万円なら、iDeCoの上限は月3万2,000円です。

DBは、会社などが運営する確定給付企業年金のことです。その「掛金相当額」は、企業年金の給付水準などを基に算定する数値で、給与明細に記載された天引き額とは限りません。自分の上限を確認するときは、勤務先の人事・福利厚生担当や企業年金の案内を確認しましょう。

4-2.適用時期と加入可能年齢の拡大を確認

「2027年からiDeCoの枠が広がる」と紹介されることがありますが、制度の施行日は2026年12月1日で、新しい上限は2026年12月分の掛金から適用されます。

iDeCoの掛金は通常、対象月の翌月に引き落とされるため、2026年12月分の通常の引き落としは2027年1月です。制度が変わる日と、口座からお金が引き落とされる月を分けて理解しておきましょう。

確認する項目時期
制度の施行日2026年12月1日
新しい上限が適用される掛金2026年12月分から
改正後の掛金の通常の引き落とし2027年1月から

適用時期は、厚生労働省とiDeCo公式サイトの案内に基づいています。

また、同じ改正では加入対象も広がり、一定の条件を満たす人は70歳になるまで掛金の拠出を続けられるようになります。

新たな対象となるのは、国民年金の被保険者ではない60歳以上70歳未満の人のうち、iDeCoの加入者、掛金を出さずに資産の運用を続けている「運用指図者」、企業年金からiDeCoへ資産を移す人などです。老齢基礎年金やiDeCoの老齢給付金を受給していないこと、企業型DCのマッチング拠出を行っていないことなどの条件があります。

マッチング拠出とは、企業型DCで会社の掛金に従業員本人が掛金を上乗せする仕組みです。

さらに、2029年11月30日までは、加入・運用経験や企業年金からの資産移換に関する要件を満たさない人も加入できる経過措置があります。ただし、老齢基礎年金などの受給に関する条件までなくなるわけではありません。

「積み立てられる年齢が広がる」ことは、「全員が70歳まで受け取れなくなる」ことではありません。 60歳以降の働き方や年金の受取予定に合わせて、拠出を続けるかを考える必要があります。

4-3.枠が広がっても、満額まで増やす必要はない

拠出枠が広がることで、課税所得があり、老後資金をさらに増やしたい人にとっては、iDeCoを優先する余地が大きくなります。一方、毎月の投資予算が変わらない場合、iDeCoを増やした分だけ、NISAなどに回せる資金は減ります。

例えば、毎月の投資予算が7万円で、企業年金がなくiDeCoに月6万2,000円を拠出する場合、NISAに回せるのは月8,000円です。所得控除の対象となる掛金は増えますが、投資資金の大部分が、原則60歳まで引き出せない状態になります。

増額する前には、次の点を確認しておきましょう。

  • 生活費や急な出費に備える預金を確保できているか
  • 住宅費・教育費・旅行費など、近い将来に使うお金を分けているか
  • 増額分の所得控除によって、税負担がどれだけ軽くなるか
  • 会社の退職金とiDeCoを、いつ・どのように受け取る予定か

生活に必要な現金を確保でき、追加分も老後まで使わないのであれば、増額を検討しやすくなります。反対に、支出予定や収入に不確実な部分があるなら、現在の掛金を維持したり、段階的に増やしたりする方法もあります。

なお、上限が引き上げられても、設定している掛金が自動的に増えるわけではありません。増額を希望する場合は、利用している金融機関で変更手続きを行い、受付期限や反映時期を確認する必要があります。

「拠出枠が増えたこと」と「自分が増額すべきこと」は、別に判断することが大切です。 NISAとの優先順位は、上限額の大きさではなく、お金を使う時期、所得控除の効果、受取時の税負担を踏まえて決めましょう。

5.iDeCoは受け取るときにも税金がかかる?

iDeCoは掛金の所得控除や運用中の税制優遇がありますが、受け取るときまで必ず無税になる制度ではありません。一時金で受け取るか、年金で受け取るかによって税金の計算方法が変わり、会社の退職金や公的年金の金額も影響します。

ただし、受取時に税金がかかるからといって、それだけでiDeCoが損になるわけではありません。長年にわたって受けた掛金の所得控除と、受取時の税負担を合わせて考える必要があります。ここでは、控除の仕組みと具体例を確認し、NISAとの比較で見落としやすい「受け取るときの手取り」を整理します。

5-1.NISAの売却・出金とiDeCoの受取りは仕組みが違う

NISAでは、対象商品の売却益が非課税となり、売却代金を銀行口座へ出金すること自体にも追加の税金はかかりません。売却・出金の時期が会社の退職金の受取時期と重なっても、そのNISAの出金額によって退職所得控除が減ることはありません。

一方、iDeCoは老齢給付金として受け取るため、受取方法に応じた税金の計算が必要です。

受け取り方税金の基本的な扱い
NISAの商品を売却・出金対象商品の売却益は非課税。出金自体への追加課税はない
iDeCoを一時金で受け取る退職所得として、退職所得控除などを適用して計算
iDeCoを年金で受け取る公的年金等に係る雑所得として、公的年金等控除を適用して計算

iDeCoでは、運用で増えた利益だけを取り出して課税するのではなく、掛金と運用益を含む受取額を基に、控除などを適用して所得を計算します。 ただし、受取額の全額にそのまま税率を掛けるわけではありません。

5-2.一時金は退職所得控除、年金は公的年金等控除

一時金で受け取る場合

iDeCoをまとめて一時金で受け取る場合は、退職所得控除の対象です。控除額の基本的な計算は、次のとおりです。

控除の計算に用いる年数退職所得控除額
20年以下40万円×年数。最低80万円
20年超800万円+70万円×(年数-20年)

会社の退職金では勤続年数が基準ですが、iDeCoでは原則として掛金を拠出した期間を基に計算します。1年未満の端数は切り上げます。単に口座を保有し、掛金を出さずに運用している期間と混同しないようにしましょう。企業年金から資産を移している場合などは、控除計算に用いる期間の確認が必要です。

例えば、iDeCoの掛金拠出期間がちょうど20年で、他の退職金との控除の調整がない場合、退職所得控除は800万円です。

iDeCoの一時金退職所得控除控除後の金額原則として税率を
適用する
退職所得の金額
800万円800万円0円0円
1,000万円800万円200万円100万円

一般的な計算では、受取額から退職所得控除を差し引き、残った金額の2分の1が退職所得になります。

(1,000万円-800万円)×1/2=100万円

この100万円は税額ではなく、税金を計算する対象となる所得です。退職所得は原則として給与などとは分けて課税されます。なお、短期勤続の退職金などには、2分の1計算が適用されない例外もあります。

年金で受け取る場合

iDeCoを分割して年金で受け取る場合は、公的年金等控除の対象です。ただし、国民年金や厚生年金などとは別に、iDeCo専用の控除枠が追加されるわけではありません。公的年金等に該当する収入を合算して計算します。

例えば、65歳以上で、公的年金等以外の合計所得金額が1,000万円以下の人について、次のケースを考えます。

年間の受取内容公的年金等の
収入合計
公的年金等控除公的年金等に係る
雑所得
国民年金・厚生年金など200万円200万円110万円90万円
上記200万円+iDeCo年金60万円260万円110万円150万円

この収入の範囲では、iDeCo年金を受け取ることで、公的年金等に係る雑所得が60万円増えます。ただし、90万円や150万円がそのまま税額になるわけではありません。ほかの所得や、基礎控除・社会保険料控除なども踏まえて最終的な税額を計算します。

一時金と年金のどちらが有利かは、退職金と公的年金の見込み額によって変わります。金融機関によっては両方を組み合わせて受け取ることもできます。

5-3.会社の退職金と受取時期が重なる場合の注意点

会社の退職金とiDeCoの一時金は、どちらも退職所得として扱われます。そのため、同じ期間を基にした退職所得控除を、それぞれで単純に二重利用できるわけではありません。

同じ年に受け取る場合

例えば、次の条件で、会社の退職金とiDeCo一時金を同じ年に受け取るケースを考えます。

  • 会社の勤続期間はちょうど30年で、退職金は1,500万円。
  • iDeCoの掛金拠出期間はちょうど20年で、一時金は800万円。
  • iDeCoの拠出期間20年は、会社の勤続期間30年にすべて含まれる。
  • 過去の退職金による調整や、短期勤続などの特殊な条件はない。

この場合、受取額の合計は2,300万円ですが、控除計算に用いる期間は30年です。退職所得控除は次の金額になります。

800万円+70万円×(30年-20年)=1,500万円

したがって、退職所得の金額は、

(2,300万円-1,500万円)×1/2=400万円

となります。

会社の退職金に1,500万円、iDeCoに800万円の控除を別々に適用し、両方とも非課税にする計算にはなりません。ここでも、400万円は税額ではなく、課税計算の対象となる所得です。

年をずらして受け取る場合

受取年を変えても、期間の重複による調整が必要な場合があります。受け取る順番によって、確認する期間が異なります。

受け取る順番後の給付を受け取る年に確認する期間
iDeCo一時金 → 会社の退職金原則として前年以前9年内のiDeCo一時金。対象は2026年1月1日以降に受け取ったもの
会社の退職金 → iDeCo一時金原則として前年以前19年内の退職金

例えば、2026年にiDeCo一時金を受け取り、2031年に会社の退職金を受け取る場合、2026年は2031年の「前年以前9年内」に含まれます。現行制度では、5年ずらすだけで重複期間の調整を避けられるとは限りません。

逆に、2026年に会社の退職金を受け取り、2041年にiDeCo一時金を受け取る場合も、2026年は2041年の「前年以前19年内」に含まれます。こちらは15年ずらしても、調整の確認が必要です。

ただし、対象期間内に受け取ったという理由だけで、必ず税金がかかるわけではありません。 実際には勤続期間と掛金拠出期間の重なり、受取額などによって計算が変わります。先に受け取った退職金が控除額より少ない場合には、重複期間の計算に特別な扱いもあります。

最後に、受取時の税金だけでiDeCoの損得を判断しないことも重要です。例えば第3章の条件で、年間4万8,000円の税負担軽減が20年間続けば、積立期間中の軽減額は合計96万円になります。

この軽減額に加え、運用中の税制優遇、制度の手数料、受取時の税負担まで含めて比較する必要があります。受取時に課税されることと、iDeCoを利用した結果として損になることは、同じではありません。

※税制と試算は2026年9月29日時点の確認内容に基づきます。将来の受取例には現行制度を当てはめており、実際に受け取る際は、その時点の制度と個別の加入・勤務履歴を確認してください。

6.年代・働き方別に、どちらを優先するか考える

NISAとiDeCoの優先順位は、年齢だけでは決まりません。同じ30代でも、数年以内に住宅を購入する人と、当面大きな支出の予定がない人では、お金の使い方が異なります。50代でも、退職金や預金が十分にある人と、教育費や住宅ローンの負担が続く人では、積み立てに回せる余裕が違います。

判断するときは、年代に加えて「課税所得」「お金を使う予定」「勤務先の企業年金」「退職金と年金の見込み」を確認することが大切です。老後資金を増やすことと、現在の暮らしに必要な資金を確保することを両立できるよう、ご自身の状況に当てはめて考えてみましょう。

6-1.20〜30代は住宅・教育・転職などの支出予定を確認

20〜30代は老後までの期間が長く、長期の資産形成に取り組みやすい年代です。一方で、住宅購入、子どもの教育、転職や独立など、今後まとまった資金が必要になる可能性もあります。

例えば、5年後に住宅購入を考えている場合、頭金として使う予定のお金までiDeCoに入れてしまうと、その時期に引き出せません。まず必要な現金を確保し、使う時期に余裕のある運用資金についてNISAを検討する順番が考えられます。NISAであっても、支払い直前の値下がりによって予定額を用意できなくなる可能性には注意が必要です。

ただし、若い人は必ずNISAを優先すべき、というわけでもありません。収入が安定し、生活予備資金や近い将来の支出分を確保できているなら、老後専用の資金をiDeCoで積み立てる選択肢もあります。

20〜30代では、運用できる期間の長さと、途中で必要になるお金の両方を確認することが大切です。 転職や独立を考えている場合は、収入が一時的に減っても生活を続けられる現金を残しておきましょう。

6-2.40〜50代は税率・退職金・受取開始年齢を確認

40〜50代で収入が増え、適用される所得税率が高くなっている人は、iDeCoの所得控除を活用するメリットも大きくなりやすくなります。ただし、節税額は年収だけで決まるわけではありません。扶養や各種控除などを反映した課税所得を確認する必要があります。

この年代では、積み立てる金額に加えて、会社の退職金をいつ、いくら受け取る予定かも確認しておきたいところです。第5章で説明したように、退職金とiDeCo一時金の受取時期や対象期間によって、退職所得控除の計算が変わる場合があります。

さらに、50代からiDeCoを始めても、必ず60歳から受け取れるとは限りません。

例えば、企業型DCなどの過去の加入期間がなく、55歳で初めてiDeCoに加入し、60歳時点の通算加入者等期間が5年の場合、老齢給付金を受け取れるのは原則63歳からです。過去に企業型DCを利用していた人などは、その期間も関係するため、自分の記録を確認しましょう。

老後までの年数が短くなると、「今のうちにできるだけ積み立てたい」と考えがちです。しかし、教育費、住宅修繕、親の介護、退職後から年金受給までの生活費など、先に必要になるお金もあります。

老後への備えを増やすために、現在の暮らしや近い将来の支払いが苦しくならない金額を選ぶことが重要です。 旅行や趣味などに使いたい予算も含め、預金・NISA・iDeCoの役割を分けて考えましょう。

6-3.会社員・公務員・自営業者では拠出上限も違う

iDeCoの上限は、働き方や勤務先の企業年金によって変わります。第4章で整理したとおり、2026年12月分からは、企業年金がない会社員は月6万2,000円、自営業者などの第1号被保険者は国民年金基金などとの合算で月7万5,000円まで拡大します。通常の引き落としは2027年1月からです。

ただし、上限が高いことと、その金額を無理なく積み立てられることは別です。働き方に合わせて、次の点を確認しましょう。

働き方最初に確認したいこと配分を考えるときの
ポイント
企業年金がない会社員自分の課税所得、退職金制度、生活予備資金老後専用に回せる金額についてiDeCoを検討する
企業年金がある会社員企業型DCの会社掛金、DB等の掛金相当額、退職金会社の年金と自分の積立を合わせて、老後資金全体を確認する
国家公務員・地方公務員共済掛金相当額、退職手当の見込みと受取時期拠出時の節税と、受取時の控除の調整を合わせて考える
自営業者・フリーランス事業所得、収入の変動、納税・運転資金、他の年金制度生活資金と事業資金を確保したうえで積立額を決める

企業年金がある会社員は、改正後の月6万2,000円から会社の掛金などを差し引いて、自分が使えるiDeCoの枠を計算します。また、企業型DCで本人が掛金を上乗せするマッチング拠出を行っている場合は、iDeCoとの同時利用はできません。

自営業者の場合は、給与収入のように毎月一定の収入があるとは限りません。売上が多かった月だけを基準に積立額を決めず、納税や仕入れなども含め、年間を通して続けられる金額を考えることが大切です。

6-4.課税所得が少ない人は所得控除の効果を確認

iDeCoの所得控除によるメリットは、本人が所得税・住民税をどれだけ負担しているかによって変わります。所得税・住民税が課税されていない人は、掛金を拠出しても、その所得控除による税負担の軽減はありません。

所得税はかからなくても住民税がかかっている場合などもあるため、「収入が少ないから節税効果はゼロ」と一律に判断せず、それぞれの課税状況を確認しましょう。また、課税所得が少ない場合は、掛金全額に対して第3章の計算式どおりの軽減効果が出るとは限りません。

なお、配偶者などが自分のiDeCo掛金を負担しても、その掛金を配偶者などの所得控除に振り替えることはできません。本人に課税所得があるかが判断の基本です。

このような場合は、運用益の非課税というメリットに加え、引き出しの自由度や手数料も比較し、NISAを中心に検討する考え方があります。

ここまでの判断材料を組み合わせると、優先順位は次のように整理できます。

読者の状況特に確認したい条件優先順位の考え方
20〜30代で、住宅購入や転職を予定している必要な金額と時期、収入が減る期間への備え必要な現金を確保し、残る長期運用資金はNISAを中心に検討
20〜30代で、収入が安定し支出への備えもある課税所得、老後まで使わない資金の額NISAに加え、iDeCoの併用を検討
40〜50代で所得税率が高く、預金にも余裕がある企業年金、退職金、受取時の税負担iDeCoの節税効果を試算し、増額を検討
40〜50代で、教育費や住宅費の負担が大きい近い将来の支出と退職後の生活費年齢に焦って増額せず、手元資金の確保を優先
自営業者で、収入の変動が大きい納税・事業資金、所得控除の効果資金繰りを確保し、継続可能な範囲で両制度を利用
課税所得がない、または少ない所得税・住民税それぞれの課税状況所得控除の効果と費用を確認し、NISAを中心に検討

※表は判断の目安であり、特定の年代や職業に一律の配分を勧めるものではありません。

例えば同じ50代でも、教育費がかかる人と、支出への備えを終えて老後資金を増やしたい人では、適した配分が変わります。まずは源泉徴収票や住民税の通知、勤務先の企業年金・退職金の資料を確認し、今後必要になるお金と照らし合わせて積立額を考えましょう。

7.NISAとiDeCoを併用するなら、毎月いくらずつ?

NISAとiDeCoを併用するときは、最初に「毎月いくらを積み立てられるか」を決め、そのうち老後まで使わずに置ける金額を考えます。同じ月5万円でも、住宅や教育などに使う可能性がある人と、当面の支出に備えがある人では、適した配分が変わります。

また、iDeCoの所得控除による税負担の軽減を、生活費に使うか、NISAでの積立に回すかによっても、将来に向けて積み立てる金額は変わります。以下では、予算別の配分例と節税分の活用方法を紹介します。自分の家計に当てはめるための例として、課税所得、手元資金、本人の拠出上限を確認しながら読み進めてください。

NISA・つみたてNISAなら ひふみ投信

7-1.月3万円・5万円・10万円の予算別に配分を考える

まず、以下の配分例には、次の前提を置きます。

  • 病気や失業などに備える生活予備資金を、預貯金などで確保している。
  • 数年以内に使う予定のお金を、積立予算とは別に用意している。
  • 本人に課税所得があり、iDeCoの掛金の所得控除を活用できる。
  • iDeCoの加入条件を満たし、NISAの年間投資枠・非課税保有限度額にも余裕がある。

金額は、節税分を再投資する前の「NISAの買付額とiDeCoの掛金の合計」です。手数料による差は、この表には含めていません。

以下は、2026年12月分からの改正後を想定した例です。通常の引き落としは2027年1月からで、企業年金がない会社員のiDeCo上限は月6.2万円になります。

毎月の積立予算重視することNISAiDeCo
3万円老後資金を重視1万円2万円
3万円途中で使える資金を重視2万円1万円
5万円老後資金を重視2万円3万円
5万円途中で使える資金を重視4万円1万円
10万円老後資金を重視4万円6万円
10万円途中で使える資金を重視8万円2万円

たとえば、月5万円のうち3万円を老後専用にでき、所得控除の効果も見込めるなら、「NISA2万円・iDeCo3万円」が候補になります。将来の働き方や住まいがまだ決まっていないなら、「NISA4万円・iDeCo1万円」として、使い道を選べる資金を多めに持つ考え方もあります。

NISAで積み立てたお金も、そのまま老後資金にできます。NISAの比率を高くすることが、老後への備えを減らすことに直結するわけではありません。

ただし、NISAは途中で売却できても、必要なときに元本以上で売れるとは限りません。近いうちに確実に使う住宅購入費や教育費は、預貯金などで確保することを先に考えます。

また、企業年金がある会社員は、改正後も月6.2万円から企業型DCの事業主掛金や確定給付企業年金の掛金相当額などを差し引くため、本人のiDeCo上限を確認する必要があります。

仮に本人の上限が月2万円なら、表の「NISA2万円・iDeCo3万円」は選べません。「NISA3万円・iDeCo2万円」などに調整します。改正前に始める場合も、その時点の上限に合わせてください。

課税所得が少なく所得控除の効果が小さい場合や、生活予備資金が足りない場合は、この表よりiDeCoを少なくすることや、併用を急がないことも選択肢です。

7-2.iDeCoの節税分をNISAへ回す方法

iDeCoの掛金によって軽くなった税負担を、NISAでの積立に回す方法もあります。

月5万円の配分例のうち、「NISA2万円・iDeCo3万円」で考えてみましょう。所得税率10%、住民税の所得割の税率10%なら、年間の税負担軽減額は次のように概算できます。

3万円 × 12か月 ×(10%+10%)= 年間7万2,000円

※年間36万円の掛金全額について所得控除を活用でき、控除の前後で同じ所得税率が適用されると仮定しています。復興特別所得税・防衛特別所得税、住宅ローン控除などの税額控除の影響は含めていません。手数料や受取時の税金も別途考慮する必要があります。

この7万2,000円を追加でNISAに回すと、積立額は次のように変わります。

年間の金額節税分を再投資しない節税分をNISAへ再投資する
iDeCoの掛金36万円36万円
通常のNISA積立額24万円24万円
節税分からのNISA追加額0円7万2,000円
積立額の合計60万円67万2,000円
税負担軽減額を差し引いた投資負担52万8,000円60万円

※最後の行は、税負担の軽減がすべて反映された後の比較です。実際の引き落とし額や、同じ暦年内の現金の出入りを示すものではありません。

節税分を再投資すれば、当初の年間予算60万円に相当する実質負担で、67万2,000円を積み立てる計算になります。同じ条件で10年間、毎年7万2,000円を追加できれば、追加した元本は72万円です。実際の評価額は運用成績によって変わります。

ここで気をつけたいのが、節税分を使えるようになる時期です。

会社員が自分の口座から掛金を払う場合、所得税分は主に年末調整や確定申告で精算されます。一方、住民税分は翌年度の税額に反映されます。年間7万2,000円は月平均6,000円相当ですが、毎月6,000円が振り込まれる仕組みではありません。

実際に取り組むなら、次の流れで考えます。

  1. まず、節税分を当てにせず続けられる金額で積み立てる。
  2. 年末調整・確定申告の結果や住民税の通知を確認する。
  3. 税負担が軽くなり、家計に残せた分をNISAの買付・積立に回す。

手元資金に余裕があり、税負担軽減額も見込めるなら、NISAを月6,000円増やす方法もあります。ただし、税効果が反映されるまでの資金は自分で用意する必要があります。

家計に必要な支出があれば、節税分をその支出に使うこともできます。再投資は、生活に余裕を残したうえで選びましょう。

松井証券ではじめるiDeCo

7-3.増額前に、手元資金と使う予定を確認する

積立額を増やす前に、銀行口座に残す金額と、これから使うお金を確認しましょう。

生活予備資金は、「毎月の最低限の生活費 × 収入が途絶えたときに備えたい月数」で考えると具体的になります。たとえば、生活費が月25万円で、6か月分を残すと決めた家庭なら150万円です。

この6か月は計算例であり、すべての家庭に共通する基準ではありません。収入の安定性、共働きかどうか、扶養する家族の人数などに合わせて決めます。自営業者なら、事業の運転資金や納税資金も分けて確保する必要があります。

増額前には、次の項目を確認すると判断しやすくなります。

確認する項目具体的に見ること
生活予備資金急な収入減や病気に備える預貯金が残るか
今後の支出予定住宅、教育、車、修繕、旅行などに、いつ・いくら使うか
毎月の収支ボーナスや残業代が減っても積立を続けられるか
所得控除の効果源泉徴収票や確定申告書、住民税の通知から、税負担の軽減を見込めるか
本人の拠出上限勤務先の企業年金や加入区分を踏まえ、希望額を拠出できるか
受取りの見通しiDeCoの受取開始年齢、会社の退職金、受取時の税金を確認したか

たとえば、毎月5万円を貯蓄・投資に回せても、近い将来の支出に備えて月2万円を預金に残したいなら、NISAとiDeCoに配分する予算は月3万円です。貯蓄に回せるお金を、すべて投資に振り向ける必要はありません。

iDeCoは月5,000円から、1,000円単位で掛金を設定できます。ただし、通常の掛金額の変更は原則として年1回です。掛金の拠出を止めても、それまでに積み立てた資産を自由に引き出せるようになるわけではありません。

まず「手元に残す金額」「毎月の積立予算」「そのうち老後専用にできる金額」の3つを書き出してみましょう。そこから本人の上限内でiDeCoの掛金を決め、残りの長期運用資金をNISAに配分すると、自分の家計に合った金額を考えやすくなります。

8.NISAとiDeCoで後悔しないための注意点

NISAやiDeCoを長く活用するには、税制の有利さに加えて、生活に必要なお金を確保できるか、値下がりに対応できるか、どのくらい費用がかかるかを確認する必要があります。節税を意識して積立額を増やしても、旅行や教育費などの支払いに困ってしまえば、家計に合った使い方とはいえません。

特にNISAは途中で売却できるため、預金に近い感覚で使いたくなることがあります。しかし、売却できることと、必要な金額を確保できることは別です。ここでは、制度を選んだ後も意識したい注意点を整理します。将来に備えるお金と、今の暮らしや近い将来に使うお金の両方を守れる配分を考えましょう。

8-1.節税額だけを見て、生活資金まで積み立てない

iDeCoの掛金を増やすと、所得控除による税負担の軽減額が大きくなる場合があります。ただし、掛金を支払った後の家計に、十分なお金が残ることが前提です。

iDeCoは原則として60歳まで引き出せず、加入期間などによっては受取りを始められる年齢がさらに遅くなります。掛金の拠出を止めても、それまでに積み立てた資産が生活費として戻ってくるわけではありません。

そのため、積立額を決める前に、少なくとも次のお金を確保しておきます。

確保しておきたいお金具体例
日々の生活と支払いに必要なお金家賃・住宅ローン、食費、光熱費、税金など
急な出来事に備えるお金病気、失業、家電の故障などへの生活予備資金
使う予定があるお金旅行費用、車検、引っ越し、入学費用など

旅行や趣味の費用も、年間予算に含めて考えてかまいません。老後資金を積み立てながら、現在の生活で大切にしたい経験にお金を使うことも、家計管理の一部です。

たとえば、毎月の給料だけを見ると余裕があっても、年間では旅行代金や税金、修繕費などのまとまった支出があるかもしれません。積立額は、毎月の収支と年間の支出予定を合わせて決めることが大切です。

拠出枠が広がっても、家計に余裕がなければ増額する必要はありません。収入が減ったり支出が増えたりしたときは、積立額を見直し、必要な預貯金を確保することを優先しましょう。

8-2.非課税制度でも、元本割れは起こり得る

NISAは投資の利益に対する非課税制度であり、購入した商品の元本を保証する制度ではありません。iDeCoでも、株式や債券などに投資する投資信託を選べば、運用によって資産が減ることがあります。

ここで押さえておきたいのが、「NISAなら売れる」と「必要なときに損せず売れる」は違うという点です。

たとえば、半年後に支払う旅行代金として用意した30万円を、NISAで投資信託に投資したとします。支払う時点で評価額が20%下がっていた場合、売却できる金額は、手数料などを考慮しなければ次のようになります。

30万円 ×(1-20%)= 24万円

旅行代金が30万円のままなら、6万円を別に用意しなければなりません。「値上がりするまで待ちたい」と思っても、支払期限が決まっていれば、回復を待てないことがあります。

※20%の下落は説明のための仮定であり、将来の値動きを予測したものではありません。

このため、旅行代金や入学費用、車の購入費など、近い将来の使用時期と必要額が決まっているお金は、預貯金などで確保することを基本に考えます。特に旅行は、出発日より前に航空券や宿泊代を支払うこともあるため、実際の支払日を基準に資金を用意しておきましょう。

長期・積立・分散投資は、値動きのリスクと付き合うための方法ですが、損失の可能性をなくすものではありません。長期運用してきた資金でも、使い道と時期が決まったら、必要額をいつ預貯金に移すか考えておくことが大切です。

また、NISA口座で生じた売却損は、課税口座の利益などと相殺する「損益通算」や、翌年以降に損失を持ち越す「繰越控除」ができません。非課税のメリットがある一方で、損失が出た場合の税務上の扱いも知っておきましょう。

8-3.手数料と商品のコストを確認する

費用は、金融機関や制度の利用にかかるものと、選んだ商品にかかるものを分けて確認すると分かりやすくなります。

特にiDeCoでは、「運営管理手数料0円」と表示されていても、すべての手数料が無料になるわけではありません。国民年金基金連合会や、資産を管理する信託銀行に支払う費用などが別にかかります。

国民年金基金連合会の手数料は、2026年12月分の掛金、通常は2027年1月26日の引き落とし分から、掛金納付の都度105円から月額120円へ変更されます。年単位拠出の場合も、改定後は拠出対象の月数に応じて「120円×月数」で計算されます。新規加入・移換時の手数料2,829円は変わりません。

たとえば、運営管理手数料が0円、信託銀行の手数料が月66円の金融機関で毎月拠出する場合、次のようになります。

手数料の内訳2026年11月分まで2026年12月分以降
国民年金基金連合会月105円月120円
運営管理機関月0円月0円
信託銀行月66円月66円
合計月171円月186円

※金額は税込み。毎月拠出する場合の例で、楽天証券が公表する手数料をもとにしています。金融機関や契約条件によって費用は異なります。

この条件では、改定後の継続的な手数料は年間2,232円です。加入時の費用や商品のコスト、受取時などの手数料は別に考える必要があります。

一方、NISAでも、購入時や売却時の手数料、投資信託の信託報酬などは確認が必要です。「購入時手数料0円」の商品でも、保有中の費用までゼロとは限りません。

信託報酬は、投資信託を運用・管理するためにかかる費用です。日々、投資信託の資産から差し引かれ、基準価額に反映されます。銀行口座から別に引き落とされる形ではないため、負担を意識しにくい点に注意しましょう。

たとえば、年間の平均保有残高が500万円の場合、信託報酬だけを単純計算すると、次のような差になります。

信託報酬の年率年間の負担額の概算
0.1%5,000円
1.0%5万円
差額4万5,000円

※税込みの信託報酬率を仮定した計算例です。実際の費用は残高の変動などで変わり、信託報酬以外の費用は含めていません。

ただし、この費用差が、そのまま運用成績の差になるとは限りません。投資対象や運用方針が違えば、値動きや収益も変わります。同じ指数への連動を目指す商品など、運用内容が近いものを比較するときに、コストの差を確認しましょう。

確認する資料は、商品の説明書である「交付目論見書」と、運用結果を報告する「交付運用報告書」です。信託報酬に加え、資産管理などの費用を含む「総経費率」や費用明細も確認すると、負担を把握しやすくなります。なお、総経費率には信託報酬も含まれるため、両者を足して計算するものではありません。

また、iDeCoで定期預金などの元本確保型商品を選んでも、利息より手数料の負担が大きければ、口座の資産額が拠出した掛金の累計を下回る場合があります。これは、積立時の節税効果を含めた家計全体の損得とは分けて考えます。

利用する金融機関の手数料一覧と、選ぶ商品の資料を開き、「口座にかかる費用」と「商品を保有する間の費用」を確認してから積立を設定しましょう。

9.NISAとiDeCoのよくある疑問

口座の開設や積立の見直しで迷いやすい点を、4つの質問に分けて確認します。

9-1.NISAとiDeCoは別々の金融機関でも利用できる?

はい、別々の金融機関で利用できます。たとえば、NISAはA証券、iDeCoはB銀行という組み合わせも可能です。それぞれの商品ラインアップ、手数料、使いやすさを比較して選べます。同じ金融機関を選んでも、口座開設の手続きは制度ごとに必要です。ただし、NISAの「つみたて投資枠」と「成長投資枠」を、同じ年に別々の金融機関で使い分けることはできません。

9-2.NISAの資産をiDeCoへそのまま移せる?

いいえ、NISAで保有する株式や投資信託を、そのままiDeCoへ移すことはできません。同じ金融機関を利用していても同様です。NISAの商品を売却して得た現金を、iDeCoの掛金の原資に充てることはできますが、加入資格や本人の拠出上限などに従って拠出します。売却代金を一度に全額入れられるとは限らず、iDeCoでは取り扱っている商品を改めて購入することになります。

手数料無料!松井証券のNISA

9-3.iDeCoの積立を止めると、お金は戻ってくる?

いいえ、積立を止めるだけでは、お金は戻ってきません。所定の手続きをすると、掛金を出さずに保有資産の運用を続ける「運用指図者」になります。資産は原則として60歳以降の受取開始年齢まで引き出せず、停止中も資産管理などの手数料がかかります。停止を希望する場合は、利用中の金融機関に手続きを確認しましょう。掛金の拠出を再開するときも、改めて加入手続きが必要です。

松井証券ではじめるiDeCo

9-4.両方で同じ投資信託を買ってもいい?

はい。NISAの対象で、利用するiDeCoにも取り扱いがあれば、同じ投資信託を買えます。取扱商品は制度や金融機関によって異なるため、両口座の商品一覧で確認してください。ただし、同じ投資信託を2つの制度で保有しても、投資先が増えるわけではありません。両口座の資産を合算し、株式・債券の割合や国・地域への偏りを確認しましょう。

10.まとめ|税金・使う時期・受取額で選ぶ

NISAとiDeCoのどちらが合うかは、所得や家計、お金を使う予定によって変わります。選ぶときは、「税金」「使う時期」「受取額」の3つを確認しましょう。押さえておきたいポイントは、次の4つです。

  1. 使う時期の自由を重視する資金はNISAが候補
    必要に応じて保有商品を売却できるため、老後資金にも、途中で使う可能性のある長期運用資金にも活用できます。ただし、売却時に元本割れしている可能性もあります。近い将来の支払いに充てるお金は、預貯金などで確保しておきましょう。
  2. 所得控除を活用できる老後専用資金はiDeCoが候補
    掛金の所得控除による節税効果は、本人の課税所得や税率などによって変わります。原則60歳まで引き出せず、加入期間等によって受取開始がさらに遅くなるため、老後まで使わずに済む金額を充てましょう。
  3. iDeCoは積立時の節税と受取時の税金を合わせて判断する。
    受取時にも控除がありますが、受取額や会社の退職金との組み合わせによっては、税金がかかります。積立期間中の節税額、受取時の税金、手数料まで含めて、家計全体でどの程度のメリットがあるかを考えましょう。
  4. 拠出枠が広がっても、家計に合った金額で利用する。
    iDeCoの拠出枠拡大によって、老後資金づくりの選択肢は広がります。 上限まで積み立てる必要はありません。生活予備資金や今後の支出を確保し、無理なく続けられる金額を選びましょう。

配分を決める前に、まずは次の3点を書き出してみてください。

整理すること確認したい内容
毎月の投資予算生活費・生活予備資金・近い将来の支出を確保したうえで、毎月いくらなら積み立てを続けられるか。
勤務先の企業年金企業型DC・確定給付企業年金(DB)などの有無と掛金等を確認し、自分のiDeCoの拠出上限を把握する。
退職金の見込み予想額・受取時期・勤続期間を確認し、iDeCoの受取りと合わせて考える。

企業年金や退職金の詳細が分からなければ、勤務先の制度資料や人事担当者に確認しましょう。

そのうえで、投資予算を「途中で使えるようにしておきたいお金」と「老後まで確保しておけるお金」に分けると、NISAとiDeCoへの配分を考えやすくなります。現在の暮らしと将来の備えを両立できる金額から始め、収入や支出の変化に合わせて見直していきましょう。

手数料無料!松井証券のNISA

松井証券ではじめるiDeCo